みんなに好かれようとして、みんなに嫌われる。勝つ広告のぜんぶ/感想

みんなに好かれようとして、みんなに嫌われる。勝つ広告のぜんぶ

「ココロも満タンに」

さまざまなコピーで有名な仲畑 貴志氏の雰囲気が全面に出ている題名がなんとも言えないオーラをかもし出しており、気になって仕方なかったので早速購入し読んでみました。この書籍、少々愚痴なんかも盛り込まれていますが、かなり確信に迫っており、面白いですよ。

みんなに好かれようとして、みんなに嫌われる。勝つ広告のぜんぶ/レバレッジメモ

一緒にライバルに立ち向かうパートナーとは
オリエンテーションでただうなずき、無批評に広告をこさえるだけの制作者は、クライアントを裸の王様化するだけだ。一緒にライバルに立ち向かうパートナーにはなれない。ほんとうの身内なら、相手のためにとって良いと思うことは直言するにちがいない。逆にいつも耳元で心地よいセリフを連発してヨイショする人物は恐ろしい存在である。

商品は、自分で自分の価値を語りなさい
ネーミングそのものがセールストークしている例として「モルツ」「清肌晶」「一番絞り」「永久不滅ポイント」「宅急便」などがある。

広告はゼロから出発できない
広告は出発点を作れない。名前と服を纏い、機能を持つ商品から出発する。つねに1なり3なりという魅力を持った商品から出発し、それを足がかりに2倍や3倍の価値へとジャンプさせるのが仕事である。ゼロから出発しない私達広告表現者はクリエーターじゃない。ビジネスマンだ。

良いパッケージは、良きディスプレイを要求する
もっとも効果を生む広告表現は脅迫であるといったらひんしゅくを買うかもしれないが、これは事実である。
たとえデザインを消費する商品でなくとも、良きパッケージやデザインは、良い場所に置かざるを得ない脅迫力を持つ。

製品では売れない。商品になっているか
ターゲットを想定した名を持ち、パッケージを纏い、広告やパブリシティで個人に対する情報価値を付加した人格を持って、製品は商品になる。
製品は、付加される情報によって、いくつもの価値と顔を持てるし、いくつもの消費者に愛される商品に変身することが出来る。

接待広告が危険である
本来、ターゲットである消費者の心を奪う意図でこさえられるべき広告が、クライアントがターゲットとなり、クライアントの心を奪う目的でこさえられたとしたら、良い結果は得られない。

広告表現は商売のための表現です。自己表現ではありません。
広告表現は、あくまでも商業活動の中での表現であって、自己表現ではない。企業のイメージ価値を獲得するためのデザインであるとか、指名買い促進のためのアイディアをこさえているので、アートだ芸術だとかいわれると腰が抜けそうになる。

プロと組んでいますか?
プロはプロしか認めない。認めたら、そこにパートナーシップが確立される。厳しいけれど、信頼できる関係。それは温かい関係である。逆に厳しい注文を避ける関係は、いっけん優しいが、本音が無いから冷え冷えとしていて、心の距離が遠く、良い仕事が生まれにくい。

広告とは?
広告は、ターゲットである消費者の心を奪い、企業や商品に関心を持ってもらい、購買行動につなげ、販売促進を果たし、いちばん最後にクライアントに喜んでいただくという仕事ではなかったか。

その広告は、ひとことで伝えられるか
ひとことで言える広告をこさえるのは、そんなに難しいことではない。広告の、どのファクターを際立たせるのが得かという問題である、何で心を奪うのかを明確にすることである。オーケストラでも、すべての楽器が主張すれば音楽にならず心に残らない。

広告予算削減のための工夫、それがクリエイティブ
戦国時代に限らず、かつてのさまざまな戦いの中で、武器、兵糧、兵数ともに劣っている集団が勝利をてにしたケースは少なからずあった。その戦略戦術家はクリエイターである。物量で勝っているグループが勝利するのは当然。少ない予算をやりくりし、工夫を凝らして莫大な量に打ち勝ち、バンザイを叫んでいい酒を飲みたい。

「早い話が」から発想する方法
「早い話が」を枕にする発想方法は、広告表現の出発点である、「何を言うか」を導き出すときにも利用できる。「早い話が…この商品はどこが売りだ」と考えればよい。また、完成されたコピーや広告制作物を判断するときに、その表現の出発点に「早い話が」が存在するか否かを見て、その広告の伝達力の強弱と情報の集約度を計ることもできる。

ごみの山を目指す人はいらない
表現者は自己の尺度を磨かなければならない。表現を選択する尺度を広く持つこと、それには低い方より高い方を伸ばすしかない。

広告量と表現の強さの反比例
コピーだけではなく、広告を形作るあらゆる要素の強度や刺激度は、露出量と距離、そして何より企業の社会的名ポジショニングによって調節しなければならない。距離が近いのに、あまり強い言葉を投げ出すと、相手の心を刺し貫いてしまうし、遠い距離に弱い言葉だと、届く前にポトンと落ちてしまう。

今どき、走らない車なんて無い
メーカーの場合、商品に対する愛情が深く、その美点を過剰表現したくなる気持ちもわからなくはないが、受け手の関心領域に無い特性をいくら訴えても効果は生まれない。逆に、私達のことをわかっていないな、ダサいなと思われ、逆効果になる。商品誕生時のような、全く存在しなかった価値が、ライバル商品を圧倒する特性が無い限り、物理的係数のみで戦うのは無謀である。

ブランドを成立させるのは、モノとコトとの統合なのだ
モノの物理的価値はどんどん低下している。それでもまだ、機能だけで売ろうとしているメーカーは多い。品質や機能の向上努力はメーカーとして当然で、品質や機能は良くてあたりまえ、デザインやファッション性はどうなのだろう。

終末コピー「いちばん安い」
恐ろしいのは、数字の戦いの終末、「いちばん安い」と言い出す事である、安売り合戦に持ち込まれた商品は悲惨である、数字の戦いは誰でも分かる上、それに勝とうとすると限界はすぐにやってくる。

おしりを洗う価値
「ウォシュレット」新発売のように、かつて存在しなかった、価値を提案するケースでは、商品がもたらす利便を伝えるに限る。

論理は発想を規制する
発想しだいで効果は勝ちとれる。だが、表現を論理と常識で削ると、凡庸になる。

もどる勇気
掘り進んだ末に違うと思ったときは、一度地上に出る。そこで白紙から策を練り直し、それからもう一度彫りはじめる。再びまったく最初から違う場所を掘り進めるというのは、力のいることではあるけれど。

広告の言葉、時代の言葉
コピーは、短いに越した事がないとされる。媒体の時間やスペースという物理的制約と、視聴者の記憶に忍び込みやすくするためである。短く書くということは、使える言葉の数が制限されるというわけで、その分一語一語の負担が重い。使用する単語の吟味が極めて大切になる。コピーの中のひとつ、気になる言葉、こすれる言葉、チャーミングな言葉、時代の言葉を振り込む。すると、突然コピーが発散するということを何度か味わった。

自分を売る工夫
誰だって高いステージを望む。しかし、良いクライアントの仕事をするには、良い表現をしなければならない。良い表現をするためには、良い製作者と組まなければならない。良い製作者と組むには、良い席を得なければならない。良い席を得るには…、この円環をどこかで割って入る必要がある。
 

みんなに好かれようとして、みんなに嫌われる。勝つ広告のぜんぶ/まとめ

ほんとうに身にしみる内容ばかり。少し分厚い印象がありますが、簡潔に書き出されているのでそこまで時間がかかる書籍ではありません。広告業界を筆者独自の視点でばっさりと切った、何度も読み返したくなる、そんな素敵で深い書籍です。お薦めです。

みんなに好かれようとして、みんなに嫌われる。勝つ広告のぜんぶ
仲畑 貴志
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3 表現するとは何かを真剣に悩みぬく
5 現代の徒然草?
4 コピーよ、よみがえれ!
4 モノを売るためのアピール

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