売り方は類人猿が知っている/感想


「不安になると、ヒトはなぜモノを買わなくなるのか?」などといった心理的アプローチ視点からマーケティングについてを記している本書は、これまで読んだマーケティング本とは一線を画す書籍で、類人猿や原人などから「消費額」を学ぶことができる、興味深い一冊です。

「不安なホモサピエンスはモノを買わない」という第一章は、皮肉にも今の日本を象徴するかのような内容でもあり、これからの日本を考えるには必要な考え方なのかももしれません。

売り方は類人猿が知っている/レバレッジメモ

消費者の言動は矛盾だらけ
その行動は不可思議なことばかりです。こういった「ちゃらんぽらんの消費者」の声に傾けるのではなく、きちんとしたカスタマー・インサイトを得る必要がある。

不平等は許されない
よほど突出した力を持っていなければ、不平等は許されない。

人間は損失を同額の利得よりも2~2.5倍も大きく感じる
自分が所有していたお金を、たとえ100円でも失ってしまうことに、人間は非常な悔しさを感じます。その不快感を、たとえば自動販売機のそばに落ちていた100円玉を拾った時に感じる快感と比較してみると、金額的には同等でも、自分が持っているものを失うときの不快感のほうがずっと大きい。だから人間は、損失を回避しようとする。これが、行動経済学でいうところの損失回避性です。

消費者には”価値”を判断できない
消費者は、商品の価値と価格を天秤にかけ、価値が価格を上回れば「お買い得」だと判断して買う、という理論は理屈に合っています。が、実際には、消費者はそういった論理的で合理的な行動はしません。…というか、そもそも、その商品にどれだけの価値があるのか消費者には判断できないのです。

低価格は諸刃の剣
企業が低価格を提示するということは、「その商品にはそれくらいの価値しかない」と示唆しているようなものだと考えることもできる。消費者が有難がるのは最初だけ。しばらくたつと、以前の価格など忘れてしまう。そして消費者は新しい安い値段に見合った価値を感じるようになるのです。

購買行動は快・不快で決定される
何かを買うことからくる快感とそれに対してお金を払う不快感とのバランスのうえに成り立っていると結論づけられます。つまり、消費者の購買行動は快・不快で決定されているのです。

購買を”正当化”しやすい商品
食品や健康関連の商品の場合、「口にいれるものは品質の良いものにしないと、結局、健康を害して医療費がかかることになる」と考えることができます。こういったタイプの商品は、価格が高くても、購買を正当化できます。家族、とくに子供の為に必要なものを買うことは正当化しやすい。だから、不安でも赤ちゃん用品や子供の教育にかかる費用は減らしません。罪悪感を覚えないからです。

購買を正当化してあげる
消費者の買い控えに頭を悩ます企業は、まず、消費者が自分の購買を正当化しやすいような仕組みを作ってあげる必要があります。

企業や広告代理店、PR会社の役割
低価格商品を買うことは、かえって逆効果だと教えてあげなくてはいけません。そして、お金に余裕のある層が罪悪感を感じることなくこれまでどおりの消費者生活をエンジョイできるように、自分たちが生活に困っている層を助けているのだと、実感できるような仕組みを提供してある。そういった仕組みを考えることが、企業や広告代理店、PR会社の役割。

過去の自分がいまの自分をつくっている
これは事実です。記憶の保存の仕方は、まさにこの言葉通り。「過去の自分」を要約した記憶が「いまの自分」の何を記憶するべきか取捨選択している。

セオドア・レビット教授
商品は自然に任せれば死んでしまう。適切なタイミングで新しい息吹を吹き込む努力をしなければいけない。

マーケティングとは?
レクサスのエコカーを所有しなければ、お金持ちとして恥ずかしい。そう感じるように仕向けるのがマーケティングの仕事です。

「商いで大切なことは飽きないこと」

売り方は類人猿が知っている/まとめ

初めに読んでいるときはなるほどーくらいで終わっていたんですが、こうやった改めて書評を書いているときにも多くの学びがありました。

特に”購買を正当化してあげる”というのはどのようなものを売るときにでも役に立つ思考ではないでしょうか。ランディングページ対策でも、”購買を正当化してあげる”ことで、これまでと異なるデータが出ることになるのは間違いありません。

モノを売ったり、モノを買ったりには、快と不快とのバランスが非常に重要だということを思い知らされる一冊です。マーケティングに関わるすべての方々は、一度でも目を通すと何か新しい気づきが得られるかもしれません。

今までに無い、こういったアプローチも非常にタメになりますね。

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