からだの一日―あなたの24時間を医学・科学で輪切りにする/感想


毎年同じことの繰り返しではあるのだけれど、年末に開催されるいくつもの忘年会、クリスマス、正月と、僕にとっては12月から1月にかけては自分に体のいい言い訳を繰り返しながら美味しいものを食べ続けることができるチャンスなのである。

とはいえ、30歳を越えてそんな不摂生を繰り返せば、当然のことながら多少なり体にガタが出てくるのは必至だ。

ところが、同じようなサイクルを繰り返すメンバーの中には、明らかに体型にガタがきていない人がいる。こういったときに「人それぞれ」という一言ではどうしても納得のできない。それが本書を手に取ったきっかけです。

同じものを食べても、太る人とそうでない人がいるのはなぜだろう。午後になると判を押したように眠くなるのはどうしてか。運動のことを考えただけで筋力が増すのは本当だろうか。睡眠不足が肥満や病気につながるのは事実なのか。本書はそんな疑問を持ったサイエンスライターである著者がさまざまな分野の研究者から話や論文をまとめた貴重な書籍だ。

結論から言ってしまうと、すべての事柄には概日リズムが大きく関係しているという。本書によれば、食べ物のカロリーも、抗がん剤の効き目も、ランニングの効果も、私たちの認知能力や異性に対する興味も一日のうちの時間帯によって異なるという。

その他にもいくつか興味深い事例を紹介したいと思う。

からだの一日―あなたの24時間を医学・科学で輪切りにする/レバレッジメモ

タスクは1つづつ処理しなければならない
デュアルタスキングテストを行った結果、参加者はタスクを同時に行った方が1つひとつ個別に行った時より時間がかかった。それらの総作業時間は50パーセント増し以上に上る傾向があるという。

なぜなら、頭の中で規則と目的を変えるのに時間がかかるからだそうだ。「これをするから、こちらの規則を必要とする」から「あれをするから、あちらの規則を必要とする」へ切り替えるのにかかる時間は1秒の数分の1に過ぎないがこの蓄積の総数が与える影響は計り知れない。

概日リズムが学習と記憶に与える影響
昼でも夜でも同じように短期記憶を形成するが、昼間に訓練されたときのみ長期記憶を形成する。研究グループによれば、夜になると、生物時計が長期記憶を形成するたんぱく質を非活性化してしまうらしい。

適正摂取量は人それぞれ
食物から私たちが摂ることができるカロリーは食物ごとに決まっているわけではなく、私たちの腸内にいる細菌によって変わる。食品の栄養成分表示を文字通り受け取ってはならない。あなたの腸内菌の構成如何では、そのドーナツはあなたにとって、隣人よりも-おそらく30パーセント以上-カロリーが高いかもしれない。

そして、すっきりしたウエスト周りが欲しいなら、一日中座ってはいけない。機会あるごとに立ち上がり、とにかく身をくねらせ、手を動かし、筋肉を伸ばし、せわしなく動き回れ。

運動の影響
運動は代謝だけでなく脳の能力をも上げることが明らかになった。トレーニングによって学習能力と記憶力が強化され、認知症を防げるという。

正しい睡眠
標準の8時間から2時間だけ睡眠時間を削るのはビールを2,3杯飲むことに相当し、4時間の場合はこれがビール5杯となり、一夜まったく寝ないのは10杯飲んだのと同じ結果になるという。

また、睡眠中、訓練で学んだタスクを構成する要素はアレンジしなおされる。すなわち、私たちの脳は睡眠中に記憶を新しいものから恒久的なものへと変える過程において再組織化する。この記憶のシャッフルによって新たな洞察が生まれる。ワグナーは、問題に対処する最善の方法は、寝る前にその問題についてじっくり考え、一晩様子をみることであると論じる。

難しい選択を前にしたとき、合理的な思考や、利益と不利益を数え上げるだけでは足りない時があるものだ。けれども、一晩寝て考えるのは役に立つ。自分の合理的な面がひととき休むからだろうか。

からだの一日―あなたの24時間を医学・科学で輪切りにする/まとめ

ここで記載したもののほかにも、多くな有意義な内容が記載してあります。

400ページほどで構成される書籍で、内容も多岐に渡るため、読み始めるまでに少々覚悟と勇気がいりますが、「からだの一日」について考えを巡らす良いきっかけになる良書です。

何故か太る、なかなか眠れない、生活リズムを改善したい、など、現代人の悩みは多岐に渡り、そんな悩みが仕事やプライベートへ与える影響は計り知れません。そんな方々には巷に溢れるよくわからない健康本や自己啓発本よりも格段にお薦めできる書籍だと思いますよ。本書は科学的な視点で正しい知識を提供してくれます。

更にはどのようなことに取り組む場合も、努力の場所を間違えないことが重要なのだ、と改めて気づかされる一冊です。その為にはやはり”仕組み”から学ぶことは重要なんですよね。

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ジェニファー アッカーマン
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