ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上・下〉/感想


リチャード P. ファインマンの名著、ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上・下〉です。

購入したのはもう数年前になり、1度は軽く読んでいたと思うんですがどうももう一度しっかりと読まないとと感じていたもので再度読んでみました。

リチャード P. ファインマンは1965年に量子電磁力学の発展に大きく寄与したことによって、朝永振一郎、ジュリアン・S・シュウィンガーとともにノーベル物理学賞を共同受賞した人物です。

私が理系だとはいえ、量子電磁力学とか言われると頭が痛くなります。そんな人間が読んでも本当に楽しく愉快で、さまざまなことに対して好奇心を掻き立てられる、そんな素敵な書籍なので、安心して手に取ってみてほしいと思います。


リチャード P. ファインマンは小さなころから好奇心の塊のような子供で、小さな頃の話の中でも非常に興味深い内容があったので引用したい。

ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉P12

11,12歳のころラジオの修理が出来るということでさまざまな依頼を受けていた時の話。

その家にさっそく問題のラジオをつけてみて驚いた。いやはやちょっとやそっとの雑音どろこではない。我慢ができなかったのも当たり前で、ガーガーゴーゴーとラジオまでプルプル震えだす始末だ。そのくせしばらくすると何事もなかったみたいに静かになって、普通に放送が入る始める。そこで僕は「何でこんなことが起こるんだろう?」と考え始めた。

ラジオの前を行ったり来たりしながら、こんな変てこなことが起こるには、真空管がめちゃくちゃな順序で熱してくることしか考えられない、アンプも熱くなって真空管もすっかり受信の用意ができているのに何も入ってこないのか、回路に電流が逆に流れているのか、とにかくラジオのつけはじめに(つまり高周波回路の部分で)チューナーがどうかしているのだ。だから何か入ってきて大きな音を出すんだろう。そのうちラジオ周波がちゃんと入りはじめて、グリッド(格子)電圧が調整されると普通に戻るだろう。

「ようし、真空管を外して全部の順序を逆にはめ直してみよう」と考えた。僕はそこで真空管の並びを変えてから、前にまわってラジオをつけてみると、さっきの雑音など嘘のように静かだ。そして熱してくるにしたがい、ちゃんと普通に鳴り始めた。

ここで学ぶべき姿勢だと感じたのは、「何でこんなことが起こるんだろう?」という思考です。リチャード P. ファインマンは死ぬまでこの「何でこんなことが起こるんだろう?」というものを考えなら、仮説を立て、実際に自身で仮説の検証を行い、その仮説が正しいことを証明し続けてきた姿勢です。

リチャード P. ファインマンは物理学とは関係のないパズルやマヤの象形文字の解読、金庫の錠前を鍵なしであけるということまで、すべての事に対して、問題が解決するまで情熱を注ぎ込みます。「なぜだろう?」と考えることを失わず、いいかげんな答えでは満足しない。わからなければ、わからないと正直に認める。これからの繰り返しこそが、彼を天才と言わしめた本質なのではないかと感じました。

ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上・下〉/まとめ

下巻訳者あとがきにリチャード P. ファインマンを象徴するには十分な表現がありました。

「ファインマンと聞いたとたんに思い出してもらいたいのは、ノーベル賞をもらったことでもなければ、理論物理学者であったことでもなく、ボンゴドラムでもマンハッタン計画でもない。僕が好奇心でいっぱいの人間であったということ、それだけだ」

本書は、生きること、学ぶこと、そして好奇心が私たちの人生をより豊かにするということを教えてくれる素晴らしい書籍だと思います。お薦めです。

リチャード P. ファインマンの動画も残っていました。

「名誉はうんざり」

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