マーケティング戦争 全米No.1マーケターが教える、勝つための4つの戦術/感想


マーケティング22の法則でお馴染みのアル・ライズ、ジャック・トラウトによる書籍で、近代ドイツの名将であり、戦略家のクラウゼヴィッツの「戦争論」を「マーケティング戦争」 に重ねて書きだした書籍です。

どんなマーケティング計画を立てるのでも、まずは「どんな戦い方をすべきか?」と胸に問うことだ。

そんなフレーズで始まる本書は、実は1987年に出版された本の改訂版であるそうなんですが、マーケティングに関わるすべての人が読むべき書籍なのではないかなと思いますが、Amazonではそんなに評価が高くないですね。個人的には時期的にもかなりツボでした。

ここで掲げている4つの戦略とは、

  1. トップ企業(ブランド)がとるべきマーケティング戦略は「防衛線」である。
  2. 二番手企業がとるべきマーケティング戦略は、「積極攻撃」である。
  3. 規模で劣る企業がとるべきマーケティング戦略は、「側面攻撃」である。
  4. 地域企業、地場企業がとるべきマーケティング戦略は「ゲリラ戦」である。

この4つに分けて、コカ・コーラやIBM、マクドナルドなどの事例と照らし合わせ、さらにはクラウゼヴィッツの「戦争論」に照らし合わせて解説していくので、歴史的背景を見ながら学ぶことができる書籍です。

マーケティング戦争/レバレッジメモ

競争相手思考へ
こんにち成功するには、企業は競争相手思考にならなければならない。競争相手が持つポジションに弱点を見つけ出し、そこにマーケティング攻勢をかけなければならないのだ。

マーケティングの新たな定義
マーケティングとは市場での戦いに勝つために、企業が用いる戦略と戦術である。

敵の裏をかけ
マーケティング戦争においても、実際の戦争と同じく、敵陣に迫る最善の策は、必ずしも最短距離を行くことではない。敵の裏をかく方法を考えることだ。

敵を綿密に知る
ナポレオン・ボナパルトは、おそらく市場もっとも優秀な軍事戦略家だった。戦場や布陣の選択は常に、綿密に敵の布陣を検討され下された。マーケティング人も、かくありたい。敵を綿密に知ることは、効果的なマーケティング戦略を開発する第一歩である。

歴史上、数で勝る側が勝っている
2対1以上の数の差のついている戦いで、少数側が勝った例は僅かに2つしかない。ほとんどの戦争では、数で勝る側が勝っている。劣勢で優勢に立ち向かう愚を犯すことはなんてばかげたことか。

市場シェアに劣るより小さな会社の戦い方
野戦将校のように発想しなければならない。軍事であれマーケティングであれ、戦争の第一原則である「兵力の原則」を忘れてはならないのである。ナポレオンは言った。「数で劣勢の戦いを強いられたときは、前線を絞り込んで、そこでは常に敵よりも相対的に大きな兵力を持たなければなたない」

より優れたアプローチとは?
より優れたアプローチとは、見込み客の認識を現実として受け入れ、それと付き合っていくことである。

防衛線の原則

手負いの動物を相手にする過ち
強者よりも弱者を襲う方が容易に思える。「赤子の手をひねる」ようなものと思うからだ。しかし真実は、ほぼその正反対といっていい。小さな会社ほど、今持っているシェアを守ろうと必死になるし、そのために値下げ、割引、保証期間延長などの戦術を繰り出してくる。手負いの動物を相手にする過ちを犯してはならない。

反撃の準備を怠るな
自社の主要ブランドが低価格攻勢にさらされたとき、大抵の会社は「様子見を決め込む」。自社の売上に影響を及ぼすかどうか、競争相手がいつまで安売りに持ちこたえられるか、低価格品になびいた顧客は戻ってきてくれるかどうか、模様眺めにでるのだ。主な競争相手が価格を大幅に引き下げてきたときの反撃の準備は日ごろから怠らないことだ。

パイそのものを大きくすること
パイ全体を抑えているときには、自社の取り分を大きくするのではなく、パイそのものを大きくすることを考えるべきだ。

積極攻撃の原則

できるだけ絞り込んだ前線で攻撃開始せよ
できれば商品をひとつに絞ったほうがいい。「フルライン戦略」はリーダーのみに許される贅沢だ。クラウゼヴィッツは「絶対的な優位性が得られないときは、もてる資源をうまく使って、勝負どころでの相対的な優位性を得よ」といった。

勝負どころでの自軍の相対的な優位性
優秀な軍事司令官は、部下の能力に勝負の行方をかけたりはしない。むしろ、勝負どころでの自軍の相対的な優位性に賭けるのである。

積極攻撃の3原則

  1. 真っ先に考えるべきことは、リーダーの持つポジション
  2. リーダーの持つ強みに潜む弱みを見つけ、そこを攻撃せよ
  3. できるだけ絞り込んだ前線で攻撃せよ

側面攻撃の原則

セグメンテーションによる攻撃
市場の中の、セグメントやニッチを探す。これは重要なことだ。側面攻撃で本当に成功したければ、だれよりも早くそのセグメントを支配しなければなたない。さもなければ、しっかりと守られているポジションに対する積極攻撃と変わらなくなってしまう。

優位な箇所に補給せよ
負け組に見切りをつけて、もっとも軍を進めている戦車部隊の司令官に補給燃料を送るべきである。

ゲリラ戦の原則

小さい池の大きな魚になる
ゲリラはもともと戦略が限られている。生き残るためには、手を広げたい誘惑を、常に自戒しなければならない。さもなければ、破滅を招くだけだ。

広告は最も大切な武器
消費者製品にとって、広告は最も大切な武器である。戦略の矛先を、毎年のように変更するのは間違いだ。おそらく、マーケティング戦略の象限を変えるときでもなければ、広告テーマには一切、手をつけるべきではない。

競争相手とは違うものになる
いかなるマーケティング戦争でも、製品は戦略を生かすための手段に過ぎない。考えるべきことは、競争相手に勝ることではなく、競争相手とは違うものになることだ。

売る商品と広告する商品を混同するな
企業が犯す最大の間違いは、売る商品と広告する商品を混同することだ。顧客がいったん来店してくれたら、何を売ろうが別に問題はない。だが、自分のポジションを弱めてしまうような商品を広告するのは、話が別だ。

真似るな
市場リーダーを真似て戦に勝つことはできない。企業は、どうしてもこの教訓を学べずにいる。勝ち目があるのは、リーダーの戦略を逆手にとった時だけだ。自軍を集結して限られた領域で相対的な優位性を得たときである。

戦略と戦術

戦略が戦術を駆り立てるべき
戦争の研究の最大の教訓は、戦略が戦術を駆り立てるべきであることだ。まず有効な戦術を考え、それから戦略に組み上げていくのだ。大半の企業は、この逆をやっている。まず、やってみたい戦略を考えて、それからその戦略に役立ちそうな戦術を探し出そうとするのだ。

現場を知ることの重要性
効果的な戦略を編み出せるのは、戦場のありようを深く、直感的に理解できる将軍のみである。彼らが戦略を身に着けたのは、まず戦場で戦術を学んだからだ。戦略が戦術に従うのである。

戦略は月並みな戦術を許容する
戦略は戦術を知り尽くすことから生まれる。しかし、逆説的だが、良き戦略は必ずしも素晴らしい戦術にそっているとは限らない。良き戦略の真髄は、戦術が特に優れていなくてもマーケティング戦争に勝てることだ。

戦略に従う戦術
戦略を立てるときに戦術的状況を十分に考えなかった司令官は、いざ戦が始まると、今度はやたらに戦術にこだわり始めることが多い。だが戦略が戦術的な視点にしっかりと根ざしていれば、ひとたび戦いが始まった後は、戦略が戦術を指揮するべきである。

マーケティング司令官のあるべき姿
良き司令官は先入観を持たない。あらゆる選択肢を真剣に考え、判断を下す前にあらゆる視点に目配りする。敵の陣営を震え上がらせるのは、こうした柔軟な心のあり方だ。いつどこを攻撃されるか、わからないからだ。不意打ちに備えることほど難しいものはない。

今日のマーケティングの問題
最大の問題は、まず最初にルールを身に着けておくべきであることに気付いていないことだ。この問題を改めるには、マーケティング人はマーケティングの歴史を体系的に学び、企業戦争を支配している戦略原則群を公式化することだ。いまや戦略ほど大切なものはない。戦略とタイミングこそ、マーケティング界にそびえる雄峰である。それ以外のすべては、小山に過ぎない。

マーケティング戦争で大切なこと
自分が何をやりたいかではない。敵(競争相手)をよく見た上で、それに合わせて自分がどうするかだ。問題は株価をどれだけあげられるかではない。競争相手と比べて、どれだけ多くの顧客をつかめるかなのだ。

ジョージ・S・パットン・ジュニア
状況をすでに立てた計画に合わせようとするものではなく、計画を状況に合わせるのだ。司令官の明暗をわけるのは、この能力の有無に尽きると思う。

フリードリヒ二世
すべてを守ろうとするものは、結局、何も守れない

ジョージ・サンタヤーナ
過去を忘れるものは、それを繰り返す運命にある

マーケティング戦争 全米No.1マーケターが教える、勝つための4つの戦術/まとめ

かなりのボリュームでしたが、それだけ私にとって有意義であった書籍であるということでした。

戦略と戦術の重要性をより深く理解することができる本書は、どのような職業でも有効活用できる内容がぎっしりと詰められています。

個人的に言えば、リスティング広告だって戦争に置き換えることができると思っています。ポジショニングもあれば、競合優位性のある場合もある。それらによってキーワードや広告文の作成のテイストも異なるし、さまざまな戦術を考え出すことができる。それらの戦術を駆使し、どこで戦うのか?どこで戦わないのか?を明確にしなければ、広告費の無駄遣いは必至だから。

だからこそ、本書で描かれているマーケティング戦争論は必要不可欠だと感じています。

そして最後に、深い言葉で占められています。
これからのマーケティング戦争を勝ち抜く為には…

マーケティング戦争を勝ち抜くには、広告代理店は戦略立案にもっと深くかかわらなければならないし、広告主は広告の戦術にもっと詳しくならなければならない。そして、その両者は同時に起きつつあるようだ。

もっともっと、これからすぐにでもできることは多そうです。

これまでのアル・ライズの書籍とは若干異なるテイストで書かれている書籍なので初めはそわそわして読み進めましたが、読み進めるうちに自分の仕事と置き換えながら読み進めることができる書籍で、すぐにでも現場で利用できる(考えることができる)内容が盛り込まれていると思います。

マーケティングに携わる方、広告に携わる方などで、新しい考え方、異なる考え方が必要だと感じている方々に非常にお薦めです。

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