広告主 アドマン春秋/感想
森永製菓の広告部で活躍されていた著者、小宮 淳一氏による「企業アドマン春秋」から抜粋したものが本書でまとめられている。
1900年代半ばからの広告事情から始まり、オイルショックを経て徐々に現代の広告業界に突入していく。正にこの国の広告の歴史そのものを目の当たりにした人物の本書は、はっきりいって面白くないわけがない。
また、歴史に興味ないよというビジネスパーソンの方々でも、最終章の筆者がこれまでに書き溜めた「広告カンニングペーパー」は一読の価値ありなのではないだろうか。
個人的にも本来の広告について改めて考えさせられる機会を得ることができ、読み終わった後の満足感も非常に大きい良書である。
広告主 アドマン春秋/レバレッジメモ
広告代理店は保険の役割も担う
契約の間に広告代理店を入れておくことは一種の保険として意味がある。
アドマンの要諦はKDD(勘と度胸と妥協)
現在のマーケティング時代でも、勘の悪いマーケターは、同じデータを読んでもなぜか失敗ばかり繰り返しているし、数字の裏を読むのも「知恵と勘」であろう。運というのは、注意力と努力で、ある程度良くすることができる。物事の初期微動をどう捕えるかもその一つ。また、「良い」ものの予測は難しいが、「悪い」または「ダメ」なものの判定は比較的やさしい。悪いものはどんどん省き、自ずと良いものだけが残る。こういったやり方も一つ。
運は人の前しか通らない。決して人の後ろは通らない
後ろを振り返ってばかりいるような生き方の人間には「運」は掴めないよ、いつも「前向き」な生き方をしていれば幸運の女神はやってくる、あるいはやって来るのが見えるもんだよ。
ギブ&テイクが建設的な横のオツキアイ
人から知識なり情報なりを得ようとするなら、自分もそれなりに勉強し、人に与えられるモノを持つ必要がある。
広告管理者に求めたい6つの素質
- 右脳人間であること(1+1=2 ということしか考えられない左脳人間では困る)
- サラリーマン発想を捨てられる人
- 金銭、快楽の欲求に淡白な人(努力してそうしてるんではなく素質として)
- 知恵のある人(知識でなく)
- できれば運の強い人
- 前向きな発想(これは5の裏返しかも)
マーケティングの原点
良い商品を作る
強い広告をする
AとBとを足して2で割るようなことをしてはいけない
「足して2で割る」とA案、B案両方のいいところがなくなり、つまらないアイデアになってしまうことが多い。それならむしろ、AまたはB案の方向に徹し、その方向の中でAならAの特徴や圭角を”削らない”で、”必要な修正”をするのが良い。広告のクリエーティブではカドを削って丸くしてしまうのが一番悪い。
一人の才能・頭脳
広告の優れたクリエーティブ・ワークは、その大本となるアイデアは一人の才能・頭脳から生まれるものであって、会議や委員会、チームのような何人かの人間の集団の合作ではできない。
「成功事例」の価値
マーケティングや広告における「成功事例」の価値は、その成功によって得る利益もさることながら、その成功事例の発生理由や要因を分析して、可能ならば二度、三度と、同じような状況、要因をそろえて「柳の下にはドジョウが三匹」を狙うことにある。
ヘレンケラー
楽観主義は成功の母
森永乳業社長、稲生平八氏
世の中森羅万象、広告宣伝に役立つものは一つも見逃すな。
広告主 アドマン春秋/まとめ
TVCMなどにも多くのページを割いているが、物事の捉え方、、考え方、取り組む姿勢など、大いに参考になる内容がたくさん詰まっている。中でも
胃が痛くなるほど「自分の問題」として考え、対処する経験をしないと、問題解決の経験なりノウハウは身につかない。
というフレーズが印象深い。これは私も痛いほど痛感する箇所であって、所謂、アドマンの共通の痛みなのではないだろうか。これを感じられるか、そうでないかで、今後の成長速度も大きく変わってくるだろう。
また、最後の「広告カンニングペーパー」はちょっとここでは書ききれないほどにエッセンスが詰まっており、その箇所だけを何度か読み返す日もそう遠くないだろうなと思う。
業種は違えど、先人の知恵に感謝したい。
日経BP企画(日経BP出版センター)
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