ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質/感想
この日本は、今年まさにブラックスワンという名の巨大地震、原発の脅威に襲われ、半年以上が経過した今でもその余波を受け続けている。
改めてブラックスワンについて紹介しよう。
ブラックスワン(黒い白鳥)とは?
まずありえない事象のことであり、次の3つの特徴を持つ。
予測できないこと、非常に強い衝撃を与える事、そして、いったん起こってしまうと、いかにもそれらしい説明がでっち上げられ、実際よりも偶然には見えなくなったり、あらかじめわかっていたように思えたりすること。
由来は1967年にオーストラリアで黒鳥(ブラックスワン)が発見されるまで、旧世界の人たちは白鳥と言えば”すべて”白いものだと疑わなかった。その為、上記のような「ありえないこと」「起こりえないこと」の比喩でブラックスワンという言葉を使うのだそうだ。
本書は、デリバティブトレーダー(主に金融派生商品、Variance(分散)やCorrelation(相関)を売買し、特に個別銘柄を見るわけではないトレーダー)で研究者であるナシーム・ニコラス・タレブによる書籍で、実社会における『ありえないなんてありえない』を皮切りに世の中で起こっている通常には見えていない悲しい現実や、知識によって招く弊害などをかなり特殊な視点で描いた、大変興味深い書籍だ。
では例えば、今回日本を襲ったブラックスワン(東日本大震災)などは予め予測できたのではないか?という議論を投げかけてみれば、答えは即答で「NO」であろう。
筆者曰く、「治療より予防のほうがいいのは誰でも知っている。でも、予防のためになにかをして高く評価されることはあまりない。」という。その為、仮に地震や津波や原発の”万が一の可能性”が学術的にでも算出されたとしても、その僅かな可能性のために日常の生活を壊してまで対処することはやはり不可能であっただろう。現に、福島にも原発反対者は多く存在していた。
本書ではこのようにも告げている。
ものごとは相対的な時間の長さで見るべきで、絶対的な長さで見てはいけない。一般的にはよい方の黒い白鳥の効果は広まるのに時間がかかり、悪い方の白鳥はとても素早く起こる。つくるより壊す方がずっと簡単で、ずっと早いのだ。
これは世の中のほぼすべての事柄に当てはまるのではないだろうか。
僕らはものごとを相対的な時間の長さで見るべきであり、大切なものに黒い白鳥が訪れても問題の無いような状態に保ちながら、大切に、大切に、しっかりと考えながら前に進まなければならないのではないのかもしれない。
いつ次のブラックスワンが訪れても、その影響を最小限にできるように…。
ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質/まとめ
本書ではさまざまな視点からブラックスワンを解説・ひも解きし、新しい視点での物事の見方を提供し、詳細に解説している。
ただ、本書の書評は本当に難しかった。他のレビューを見てもこれほど賛否で別れるレビューはほかにはないだろうと思います。確かに翻訳がおかしいのか?と思えるような記述も多く、はっきり言ってまとまっているとはお世辞にも言えない作りになっており、読むのにも多少の苦痛が伴います。
しかしながら記述した通り書いてあること自体は非常に興味深い内容が多く、きっと思いがけない発見があるはずです。特に前提条件に縛られない考え方、仮説の立て方、専門家故の視野の問題などは目から鱗になる方もいるかと思います。
こんな時だからこそかもしれないけど個人的にも感銘を受ける箇所があり、レバレッジメモとは程遠いけど、自身の覚書として記述しました。少なからず数字や確率に関わる方、専門家の方、リスクテイクに無縁の方などにお薦めの書籍かもしれません。
個人的には面白い、つまらないとかそういう問題ではなく、是非読んでほしい書籍です。
ダイヤモンド社
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