ビジネスを育てる/感想


本書を読むきっかけは北欧雑貨を取り扱うクラシコム青木さんが何回も読んだ!とか、下記みたいに絶賛していたからであります。


出来る経営者をここまで言わしめる本書をスルーする勇気もなく、早速Amazonでぽちったわけであります。

本書のテーマは「ビジネスを育てる」であり、ここでいう「育てる」という言葉には、3つの意味があるそうです。

  1. 自分の周囲の世界へ関心を持つ
  2. 人から学ぶ
  3. 自分を変える

なるほど。これらを踏まえて、筆者の体験談やこれまでのビジネスを通して学んだ多くの経営ノウハウが集約されている書籍で、ビジネスのスタートアップ時などには非常に参考になる書籍です。

ビジネスを育てる/レバレッジメモ

ご都合主義を超えた価値
成功するニュービジネスの多くは(全てとは言わないが)、ご都合主義を超えた価値から生まれている。ビジネスが成功するのは、より広いビジョンを持っているからなのだ。あなたの周囲の世界を曇りなく見つめる事。それがアイデアをビジネスに育て、実行し、永続的に繁盛する際の大事な一歩となる。

起業家精神とは
「これが自分のやりたいことだから」、と自分の視点から初めて成功した起業家は少ない。成功する創業アイデアはある特定の職業にのめりこんだり、趣味が講じたり、あるいは何かをほかの目的を追求していく中で生まれる。起業家は「世界にはこれが欠けている」という熱い思いに駆られて製品やサービスを新しく思い描き、あるいは改良を加えるのだ。起業家は新しい世界のドアを開ける人となることが多い。そしてそのドアの向こうに成功が待っているのだ。

ビジネスの”本質”とは何か
ビジネスの報酬をお金、リスクを失敗と見るのは本質ではない。損益は損益計算書に任せればよろしい。大切なのは、損益にかかわらず、何事かを生み出す泉となる数限りない活動である。

ビジネスの成長とは
ビジネスの成長は一歩一歩階段を昇るようなもの。階段を丁寧に踏みしめていけば、失敗はほとんど起こりようがない、そう僕は思う。近道をしようとして、段を飛ばしたりしてはいかない。最初の手抜きが、失敗の引き金になってしまう。

全身全霊を込めて取り組め
ビジネスを育てるということは、あなた自身が汚れ仕事にも自ら精通することを意味する。初めの初めに、業務全般について正しくコントロールできるだけの力をつけよう。業務がどのような基本要素によってなる立っているのか知ろう。

あなたの直感は正しい
リスクばかりが目立つようなら、もう一度考え直した方がいい。考え直して、それでもまだチャンスよりリスクの方が多いのなら、再考の余地ありだ。あなたの直感は正しい。

「なぜ?」を手に、顧客の立場に立ってみよう
表へ出て、自分の会社を外から眺めてみよう。世界の成り立ちを初めて目にした子供の気持ちになってみよう、晴れた日には人でにぎわう公園に出かけよう。部屋にこもってビジネス書などにかじりついていてはいけない。(本書も例外ではない!)遊ぼう・仕事にゲーム感覚を取り入れよう。

スモールビジネスにとって最大の問題は資金過剰である
規模が大であれ、小であれ、最大の問題は想像力の欠如であって、資本じゃない。創業まもない企業がイージーに資金を手に入れられることは、創造性をスポイルする悪しき影響を持つ。

問題が常にあることが当たり前
問題は常にある。問題があるからこそそこにチャンスがある。問題はチャンスが姿を変えているだけなのだ。

企業が提供するべきもの
ビジネスをやるかぎりはお金を儲けなければならないが、何より優先するべきなのは、人が「欲しい」と思う製品・サービスを提供することだ。想像力と創造性が、これまで工業化社会での定石の「競争相手を打ちのめす攻撃性」よりも必要性を増している。

大企業はスモールビジネスの足元にも及ばない
いまある家電製品の一つとして大企業が生み出したものはない。洗濯機、電子レンジ、ドライヤー、アイロン、電気ランプ、冷蔵庫、ラジオ、トースター、換気扇、電気座布団、電気かみそり…など

スモールビジネスの命
大企業は「安定」と「画一性」を基にするが、スモールビジネスは「変化」と「差異」が命だ。

耳を澄まそう
ビジネスはあなたの人となりと、何を学び、何を為そうとしているかを拡大したものだ。いまのままではいけない、より改善したい、変えたい…自分の中にあるそれらの「思い」に耳を澄まそう。

良いアイデアの初速は遅い
何かいいアイデアが浮かんだら、友人に話してみるといい。「素晴らしい」と感想が返ってきたら、きっとトラブルに見舞われるだろう。話した相手が「抜群だね」と反応したら、時すでに遅し。ほかのだれかが手を付けている。友人がわけのわからない顔をして肩をすくめたりすれば、ヤッホー、見込み大だ。クスクス笑ったり、大笑いされたら、そのアイデアには「何か」ある証拠だ。少なくとも新しい。

成功に繋がる革新的なビジネスアイデア
成功に繋がる革新的なビジネスアイデアはあなたの鼻先にある。自宅、オフィス、ガレージ、庭…。あまりに身近で、多くの人は気が付かない。でも、あなたにとってはのどに突き刺さった小骨のように気になって仕方がない。あなたは自分のアイデアというレンズを通して世界を眺め始める。

「する」ことではなく、「である」こと
市場や世界の激動を生き延びてきた理由として、これらの企業が自らの企業目標「であること」だ。企業目標を「する」のではなく。自社のビジネスを、世界との交流方法として定義しており、決してある特定の製品・サービスを提供することとは定義していないのだ。新しくおむつ産業に参入した企業の目標は例えば、「アメリカ一真っ白なおむつを提供する」だ。しかし、もっと望ましい目標は、「新生児をもつ母親に最高の援助を提供する」だ。

過ぎたるは猶及ばざるが如し
会社の成長過程でもっとも赤信号、要注意なのは、激しく成功が続き、びっくりするほど儲かって売り上げの伸びが驚異的に速い時だ。この要素は、外面の成功に隠された失敗の種を見えなくし、育ててしまう。

商売に必要な5つのセンス

  1. 粘り強さ
  2. 事実に向き合う能力
  3. リスクを最小にできる力
  4. 現場で学ぶことのできる力
  5. 数字で考える力

昨日の真実は今日はもう使えない
できるビジネスパーソンは「真実」なんて手に入るものではないと思っているし、昨日の真実は今日はもう使えないこともあるということもわかっている。経験豊かなビジネスパーソンは、真実を求める代わりに、質問する癖をつけている。そして、質問が正しければ、おのずから答えは見つかるはずである。

現場から学ぶ
目の前に立ちふさがるトラブルは全て、あなたのビジネスの中から生まれ出たものであり、逆に言えば、会社の未来を映し出してくれているとも言えるのだ。何にせよ、あなたは自分が理解していないことを人に任せることはできないのであり、顧客に販売することも不可能なのだから。自分からどっぷり現場にはまりこんでこそ、未来が開けるというものだ。

「正しくない」と感じたら、正そう
社員には、「自分が正しいと思うことをしていい」許可を与えるべきだ。同時に、責任も負ってもらう。「正しいと」感じられるようにしよう、正しいと感じられるフィーリングこそが全てだ。なぜなら、顧客は製品と紙幣を交換するのみならず、フィーリング–それがいいものであれ、悪いものであれ–も一緒にお持ち帰り頂くのだから。

フレッド・スミス
借り過ぎる最大の問題は、君が新しい共同経営者を得てしまうということだ。

エイブラハム・リンカーン
人間に必要な足の長さってどれくらいだと思う?地面に届く長さで充分だ。

ドロシー・セイヤーズ
ビジネスは生きる為に行うものではない。行う為に生きるのだ。

ライル・スペンサー
起業家は、外部にいる者からするととんでもないリスクをあえて取ろうとする。しかし、確信に満ちた本人にとっては、ちっともリスクではないのだ。目の前に飛び越えるべきリスクの谷があったとしても、第三者と起業家とでは感じる深さが違う。自信ある起業家にはやすやすと超えられると見えるようだ。

ビジネスを育てる/まとめ

本書ではビジネスに対する姿勢や考え方、題名通りにさまざまなビジネスの育て方などの多くのノウハウが詰め込まれていて、かなり”本質”をつかれており、読んでいてすっきりするというか、何とも言えない爽快感があります。

昨日の真実は今日はもう使えない、これは私たちの業界で言えば当たり前ですが、どうしても過去の成功体験にしがみついてしまいがちです。更に過ぎたるは猶及ばざるが如し、成功に隠された失敗の種を拾い集めて、より強固な組織にしなければなりません。

これら以外にもレバレッジメモの量でもわかる通り、個人的にも多くの学びがありました。読み進めるうちに、実際にできている箇所とできていない箇所が明確になり、今後の方向転換や戦略の策定などにも大きく貢献する書籍であることは間違いありません。この時期に本書に出会えたことは私にとっても素晴らしい出来事でした。

これから起業を考えている方、社内で何かがうまく行っていない方、はたまた、起業家の方、さまざまなビジネスに携わる方々にお薦めできる超良書だと思います。

# 本書を紹介してくれた青木さんが素晴らしく参考になる人材採用プロセスの記事、【2011年クラシコム人材採用プロセス後記】第一回 背景と選考のポイントを上げてくれましたので、人材採用に関わる方はご一読をお薦めします。

ビジネスを育てる
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