ソーシャルインフルエンス 戦略PR×ソーシャルメディアの設計図/感想

「状況?何が状況だ。私が状況を作るのだ。」
                 by ナポレオン・ボナパルト

ソーシャルインフルエンスとは、ソーシャルメディア上のバズを最大化させるなどいった狭い世界の話ではなく、戦略PRによって「売れる空気をつくる」ことでもない。「自分ゴト化 × 仲間ゴト化 × 世の中ゴト化」を進め「人を動かし、話題をおこし、世の中を動かす」新しいコミュニケーションコンセプトだ。本書はそれらの道標を示す初めての書籍です。

著者は名著である戦略PRの本田哲也氏とソーシャルメディアマーケター美咲でもおなじみの池田紀行氏の共著。彼らの書籍を1冊でも読んだことがあれば、手に取らずにはいられない書籍となるはず。

ソーシャルメディアとの付き合い方から考え方だけに留まらず、「自分ゴト化 × 仲間ゴト化 × 世の中ゴト化」におけるそれぞれの役割について具体的に解説している。この考え方は”広告”に関わる者であれば必ず必要な考え方ではないかと僕は思う。

特に第4章「ソーシャルインフルエンスを生み出す」で上げられている自分ゴト化のデザインについては、改めて見直されている箇所ではないかと。昔からありましたよ、確かにあったけどこういった本質的な考え方がより重要視されてきたという風に言えばいいのかな。とにかく、この考え方はリスティング広告においてだって超が付くほど大事なわけであります。

そういった意味ではこのブログを読まれているような方々も得られることが非常に多い書籍だと思うのです。

ソーシャルインフルエンス 戦略PR×ソーシャルメディアの設計図/レバレッジメモ

影響力の3つの変化

  1. 影響力のベクトルが変わった
  2. 影響力の範囲が変わった
  3. 影響力のスピードが変わった

情報を得るときの3つのバイアス

  1. 選択的注意:自分の聞きたいことしか聞かない
  2. 選択的歪曲:自分の都合の良いように解釈する
  3. 選択的記憶:自分の覚えたいものだけ覚える

毎日の生活の85%が無意識行動
「知っていること」は無視するが、「知らないこと」はもはや無視でもない。無視とは、認知していることに対して行うものだ。「この情報は関係ないから無視しておこう」とは、その情報を知っているからできる「意識的なスルー」なのだ。知らない情報を無視することはない。知らない無関心情報は、「無意識のスルー」なのである。

スーパーマーケットの店頭意志決定率は60~70%
ラスト30センチは店頭マーケティングがカギを握っているのだ。「売上はマーケティングコミュニケーションのみによって成らず。」

購買プロセスの功罪
AIDMA-AISAS-SIPSなどの購買プロセスは誰もがわかりやすく使えるものにするため、あえて細かいことや例外については排除している。購買プロセスは商材によって大きく異なる。モデル化された購買プロセスはわかりやすい反面、思考を停止させてしまうリスクがある。

カジュアル世論と広告との連携について
戦略PRはカジュアル世論をつくってニーズを掘り起こす。広告はその解決策を提示する。カジュアル世論を形成することで、消費者に「気づき」を与え、「買う理由」を生み出す。そんな「買う理由ができた状態」の消費者に、「あなたが探している商品はこれではないですか?」と広告する。

自分ゴト化のデザイン
自分ゴト化されていない情報は仲間ゴト化も世の中ゴト化も進まない。「この情報は自分に必要な(価値のある)情報だ」と感じてもらうことが最も重要な作業となる。「自分ゴト化」させるためには、興味のない対象物に「新たな意味づけ」をしてあげなければならない。それがコンテクストプランニングだ。※コンテクストプランニングについては次世代コミュニケーションプランニング参照

ソーシャルインフルエンス 戦略PR×ソーシャルメディアの設計図/まとめ

全体を通してみると、本書の内容をそのまま再現することができるようなシチュエーションに置かれた人間が日本に何人いるかと言えばおそらく数えるほどしかいないはず。ただ、中に書かれてる考え方を断片的にでも取り入れることができれば、これまでの広告に対する考え方やプロモーションに対する考え方の中に、何かしらのきっかけや刺激を与える事ができるというのは間違いないと思う。

自身でも現在進行形で動いているプロジェクトに被せて考えることができたので、まさに道標となってくれた書籍です。お薦め。

「状況」や「環境」は、そのまま受け入れるものじゃない。主体的に「生み出す」ものだ。
                 by ナポレオン・ボナパルト

ソーシャルインフルエンス 戦略PR×ソーシャルメディアの設計図 (アスキー新書)
本田哲也 池田紀行
アスキー・メディアワークス
売り上げランキング: 992

執筆/掲載記事

▲