行列ができる病院には理由があったという話


思ったことを診療中にエバーノートに書き込んで、そのままリライトしているので少し長いですし乱文です。お時間のある時にでもどうぞ。

私事だけれど少し前から咳き込むようになって、初めは風邪かなぁ程度に思っていたんだけれど、どうもこれが1か月以上経過しても治る見込みが無い状態だったんで事務所から近場の呼吸器系を扱う病院を探して医者に行ってみた。病院には僕以外に1名もいない状態で受け付けの加藤ローサ似の美女がいるだけ。

診療で僕は風邪ではないと言い張ったんだけど「風邪じゃないか?」くらいの診断を受けて「まずは薬を5種類くらいだすから様子みて出直して」的なことを言われ、素直な僕はそのままその薬を飲み続けたんだけれど、どうにも一向に良くなる気配がいない。いや、正確に言えば薬を飲んでいるうちは咳が止まるんだけれど、薬の効果が切れそうになると以前の状態に戻ってしまうというのが正解かも。

これはさすがにいかんだろ、ということでその病院に行ってその旨を伝えてみると、結局再診でも同じ薬を処方され、もう少し様子をみろってことだったので僕はこの時点でこの医者に見切りをつけた。

新しい病院へ

病院なんてのはリスティング広告やSEOをやるわけでもなく、サイトすら持っていないことが当たり前だからネット上で良い病院を見つけるのも一苦労。近場でピックアップして片っ端から電話をすると、平日の昼頃にも関わらず15人待ちだから1時間以上かかるという病院を見つけた。

前回の病院は待ち人0人だった。前と同じミスは繰り返さぬ。混んでいるからこそいってみようではないか。ということで結局は1.5時間待たされたんだけれど、そこで僕は本当に驚いた。

自身の仮説とその検証の説明を丁寧に行う医師

まず、挨拶もそこそこに、医者にもガイドラインやフレームワークのようなものがあることを丁寧に教えてくれた。そしてそれが医師のレベルによって多少異なることも。「あなたが困っていること、現在の症状、何故ここに来たのかを教えてください」という。テキストで書いてしまうと無機質なものに見えるけど、とても丁寧で安心感と好感が持てる話し方だった。

現状分析

まずは現在の症状と飲んでいる薬を提出すると、その医者は苦笑して前の病院名を聞いた。決してその病院をけなしたり否定をしたりはしなかったのが印象的だった。そして、今の症状に合うような薬ではないことだけは明確に伝えてくれた。

仮説とその説明

ヒアリングから自身のガイドラインに照らし合わせた後、仮説を話し出した。医師の仮説はこうだ。少し長いけれど、要所要所を記憶して直ぐに書き起こしたので、おおよそ内容はそのままのはずです。

3週間続く咳は風邪ではない可能性が極めて高く、アレルギーを疑う必要がある。仮にその咳が2ヶ月続く場合は更に深刻な病気を疑う必要がでてくる。それは肺結核や肺がんと呼ばれる重度の病気だ。だから僕は恐らくアレルギー(花粉やヒノキの類)を疑っているよ。そしてそのための治療から入るつもりだ。

ただし、それを決めつけるのはまだまだ早い。その検証には触診だけではなく、レントゲンをとったり、さまざまな診断が必要になる。だから初めから病名を決めつけるようなことはしない。仮に君がこの後に僕を不振がってしまって別の医者にいってしまった時に、君は肺結核や肺がんの恐れがあると言ってしまうだろ?(病名にインパクトがあるため、どうしてもそのようになるそうだ)

そうした場合、その医者もそのような色眼鏡で見てしまい、肺結核や肺がんの疑いから入ってしまうからだ。良い診断はフラットな状態でなければ行えない。

ただし、年齢的には考えられないが万が一も重要だ。肺癌や肺結核を疑う必要がある。その為にレントゲンだけとらせてくれないかい?1,2分で撮れてしまうし、決して高額なものではないからね。その時計はつけたままでいいし、Tシャツの上からでとれるのだから着替える手間もないんだ。

それから薬は●●を1週間分、▲▲を2週間分出しておくよ。僕の予想では1週間程度で呼吸が楽になっていくはずだ。仮に1週間分の薬が切れた後にも症状が戻ってしまうようなことがあれば直ぐに病院に来てほしい。その際には次の診断を行う用意があるよ。

この間、診察室に入ってからおおよそ3分から5分の間だったと思う。僕は正直驚きを隠せなかった。こんなにもロジカルで、こんなにもスッと受け入れられる提案があるだろうか?

的確な現状分析からの明確な仮説立て。更には可能性は低いはずなのに、自身の仮説が外れた場合の対処法まで頭の中に入っているのだ。そして何よりもその表情からあふれ出す自信。僕が女性だったらイチコロだ…(違) 

それは置いておくとして、これほどの提案をされて専門外の僕がNOと言える余地なんてあるわけがない。そりゃぁこの病院が混むわけですよ。混むには混むなりの理由があるってわけですな。

本質的には医師もリスティング広告プレイヤーもアナリストも変わらない

僕はこのような機会を得て、人の悩みを解決するという広義で見れば、医者がやっていることと、アナリストやリスティング広告プレイヤーがやっていることはなにも変わらないと思ったし、僕自身、まだまだ発展途上であることを痛感させられた。

このベテラン医師のように抜群の安定感と安心感、そして専門外の人にも分かり易く伝える技術、これらを鑑みるともっとやれることはあるし、これまでとは異なるような、もっともっと違う取り組みをすることだってしなければいけないと思うし、出来るとも思った。まだまだ頑張らないといけないと心から思えた、そんな素敵な病院でした。

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迷惑をかけるといけないので病院名は伏せました。興味がある方は連絡ください。中目黒の病院です。

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その後、咳がピタッと止まりました。やはりこの医師の仮説は当たっていたんだなぁ。

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