フェイスブック 若き天才の野望/感想


フェイスブック 若き天才の野望をやっと読み終えた。

本書は発売当時に購入していたけど、手元に届いた途端、やたらと分厚い(総計500ページを超えている!)ので読み始めるまでに大分時間がかかってしまったが、読み終えた今としての正直な感想として、手元に届いてからすぐにでも読むべき素晴らしい書籍だった。

フェイスブックについては映画ソーシャル・ネットワークでも見ているが、この映画はザッカーバーグ本人に取材を拒否され、「服装以外は嘘」とまで言われているらしい。とはいえ、個人的にはこのDVDをすでに20回以上は見返している。
# 素晴らしくテンションが上がる映画で最高に面白い!

既にスタートアップしているベンチャー企業に限らず、男子たるものこの書籍を読んで触発されないわけがない、とまで言い切れるほどにフェイスブックについて、マーク・ザッカーバーグについて詳細に描いている書籍です。これまでのフェイスブック関連の書籍とは全く異なる。

本書は下記のようなマーク・ザッカーバーグの一言で始まる。

われわれの会社はガスや水道と同様の公益事業です。人々が世界を理解する方法をより効果的なものにしようと試みています。われわれの目的はサイトの滞留時間を最大にすることではない。われわれのサイトを訪問している時間を最大限に有意義なものにしようと努力しているんです。

はい、もう敵わないよね。

フェイスブック 若き天才の野望/レバレッジメモ

ダスティン・モスコヴィッツ
野心ある天才だというだけでは、成功はできない。運もよくなけりゃダメなんだ。

ショーン・パーカー
企業のリーダーたるものは、頭の中に決断が枝分かれのツリーになって入っていなければならない。もしこれが起きればこっちへ行く。しかし別のことが起きれば、別のこの方向に行く、という具合にね。マークは本能的にそういうことができた。

非常に優れたリーダーというものは、特にスタートアップの場合、どこでノーというべきかを知っている。明確なビジョンを描いて全員をそれに向けて鼓舞していくことも重要だ。しかし限界を知っていなければならない。特にプロダクトについては、無謀に手を広げすぎないようにすることが、重要だ。何もかも一時にやるわけでにはいかない。マークは当時まだこのことをわかっていなかった。彼がそれを学んだのはもっと後になってからだ。

アンディー・グローブ
こうした競争ではパラノイド(疑り深い人)だけが生き延びるんだ。

マーク・ザッカーバーグ
難しいのは機能を追加することじゃない、どんな機能を付けないか、なんだ。

情報の動きは加速されていく。これは、テクノロジーが招いた将来の世界の動き方であって、フェイスブックが何をするかには関係ない。

市場でのポジションが強化される限りは、儲け方は後で考える。

成長とユーザー体験の継続的改善は、常に収益化より重要。

基本的な考え方は、広告がコンテンツであるべきだということ。広告とは本来、人間がサイト上で生成する有機的情報であるべきだ。人間が作り出す多くの情報は本質的に商業的だ。

マーケティングは、企業が人々に広告を押し付けることであってはならない。それが正しくないからではなく、もはや効果がないからだ。広告ということばは、フェイスブックで起きていうことを表すには、もはや適切な単語ではない。それは便利な略語にすぎず、人々がもっと自社製品に関心を持つようにと企業がお金を使うプロセスを指す。

シェリス・サンドバーグ
本当の自分にならない限りフェイスブックにはいられない。

ベン・パー
プライバシーは消えていない。むしろ容易に制御できるようになったのである。共有したいものを誰とでも共有する、秘密にしておきたいことは頭の中にとどめておく。

グーグルとフェイスブック
グーグルは、インターネットの私有地にある塀の向こうのコンテンツを検索することができない。フェイスブックと密接な関係を結ぶことによって、大量の広告スペース以上のものが手に入るかもしれない。これがグーグルが、インターネットの発展と共に支配を続けるために役立つかもしれない。

ふつうユーザーがそこでクリックするのは、自分が探しているとわかっているものに応じた広告だ。広告用語でいえば、グーグルのアドワーズ検索広告は「欲求を満たす」。対照的に、フェイスブックは欲求を生み出す。グループはそう結論を出した。それが長年テレビを支配してきらブランド広告のしていることであり、広告宣伝費の大半が費やされている場面でもある。ブランド広告は人の脳に新しいアイデアを注入する。

グーグルとフェイスブックの異なる思想
グーグルはcookieを通じて、みんながウェブのどこへ行くかを追跡することを良しとし、それが、人の興味に関するプロフィールをつくる彼らのやり方だ。だが、これを論理的にとことん押し進めていくと、ちょっと恐ろしくなることがわかるだろう。みんなが共有したいものを共有できるようにして、何を共有するかを制御できる良いツールを渡せば、さらに多くの情報が共有されるようになる。クローリングやインデックスされたくないものだってある。

つまり、人々が自分で制御できるようにする必要がある。とこかの監視システムに追跡される集中制御方式ではなく。これは僕の人間の中で非常に重要な部分で、ぼくがいつも真剣に考えていることだ。

「Don’t be evil.(邪悪になるな)」がグーグルならば、「Don’t be lame.(ダサいやつになるな)」がフェイスブック。

フェイスブック 若き天才の野望/まとめ

今回のレバレッジメモは登場人物の名言集のようになってしまったけど、ベンチャー、マーケティング、人事、VCなどなど、さまざまな面で本書は多くの気づきを与えてくれる書籍だ。

特に個人的には広告に関するあり方である、基本的な考え方は、広告がコンテンツであるべきだということ。といったフレーズが印象深く、フェイスブックでは収益を上げることよりもこの広告がコンテンツであるべきという思考の方が重要視されているという点がフェイスブックの考え方そのものを表しているのではないかと思う。

これは私たちが常に管理しているGoogle AdWordsのコンテンツターゲットやプレースメントターゲットなんかにも同様のことが言えるしね。SEM関係者であればこういった思考の理解は必須だ。

本書はインターネット関連で仕事をされている方々にはもちろん読んでいただきたいと思うし、そうでない方々にも非常に参考になる個所が多い書籍なのではないかなと感じる。

現在進行形で進化し続けているフェイスブックという会社を取り巻く環境、歴史を事実に忠実に基づき、生々しく描いた、非常に素晴らしく、エキサイティングな書籍で、本年を代表する読み応えのある一冊であることは間違いない。

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フェイスブックをより詳細に知りたい、マーケティングとして考えたい、と考えている方々には、下記の2冊もお薦め。

  1. Facebookマーケティング戦略
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