大震災の後で人生について語るということ/感想


ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質でも取り上げたように、今の日本はいまだ解決しない問題が山積みであり、政治家はオフレコ懇談という仕事の一環である場にも関わらず何を思ったのか暴言の連発で、マスコミはそれらを公開し、政治家を表舞台から引きずり降ろし、次々にさまざまな政治家がこのループを懲りずに繰り返し、結局は大きなブーメランとなってこの国の国民であるボクたち自身に跳ね返ってきてしまっているのではないかと思わざるおえないこの日本は大丈夫かおい。

そんなどうしようもない世の中でも、僕らは現実としっかりと向き合って、生き、前に進んでいかないければならないのではないだろうか。

本書では1997年(アジア通貨危機)と2011年(東日本大震災)にこの国に現れた2羽のブラックスワンを引き合いにだし、私たちになにができるのかを説いている。

ユニークな税金対策やサラリーマン法人などでお馴染みの貧乏はお金持ち──「雇われない生き方」で格差社会を逆転するの著者である橘 玲氏が震災後に手掛けた本書は、題名通り大震災の後で改めて人生について見直す最後の機会を与えてくれる書籍かもしれない。

以前にも紹介したように、ものごとは相対的な時間の長さで見るべき良い事例が載せられていたので紹介したい。

地獄への道は善意によって敷き詰められている
「自殺対策」について、自殺者の増加が失業率と相関していることは明らかですから、そのもっとも有効な対策は雇用を増やして失業を減らすことですが、この人たちは失業を減らすためには会社が労働者を解雇できないようにすればいいと考えます。ところが会社はできるだけ採用を控え、非正規社員やアルバイト・パートで済ませようとします。これにより、正社員の解雇規制をきびしくすればするほど失業率は高止まりして、状況は悪化する一方になります。

尚、経済学には解雇規制と失業率に関する統計調査がたくさんあり、その多くが、社員を自由に解雇できるようにしたほうが失業率が下がるという結果を示しています。

ここで紹介されているように、ものごとは大きな流れの中で見なければいけないのは一目瞭然ですが、それが実際には善意によって敷き詰められた地獄への道によって阻まれているのがこの国の現状です。

どんな事柄でもそうだけど、目先のモノだけではなく、本質を知らないと”本当の問題”は解決することはできない。

成功はバザールに埋まっている

橘 玲氏はこれが日本が変わる最後のチャンスだといい、そんな日本でも悲観的な内容だけではなく、私たちの社会が伽藍によって完全に覆われているわけではないといいます。

それらは今回の震災で評価を上げた、孫正義、三木谷浩史、柳井正など、いずれもバザール(ベンチャー系のIT企業や外資系の金融機関だったり、いわゆる開放的な空間)の住人の存在であり、ソニーやトヨタなどの大企業は存在感を無くした以上、今後は個人の能力、いわゆる人的資本を売り物にしたバザールの住人が増加するためであると。

これって最近話題になっているような内容に近いですよね。”組織”も大事だけど、”個”が重要視されるって話って今の主流なのかしら…と思いつつも、個人的には「いやいや組織でしょ」と突っ込みつつ、避けることのできない運命でもあるのでしょうかねぇ、と、なんかモヤモヤ。

大震災の後で人生について語るということ/まとめ

とはいえですね、こんな時代ですから、私たちはこれまでに築いた人生のポートフォリオを今一度真剣に見直す必要がある時期に差し掛かっているのかもしれません。

本書はそのきっかけを与えてくれる書籍です。

この他にも橘 玲氏の得意分野である資産のポートフォリオ設計などもこれまでの書籍同様に記されており、以前の書籍をいくつか読まれている方には若干物足りなさを感じてしまう可能性もありますが、大震災後に改めて考え直すきっかけを与えてくれるだろうと思います。

大震災の後で人生について語るということ
橘 玲
講談社
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