なぜ、その「決断」はできたのか。/感想


忘れもしない2011年、3月11日の東日本大震災。また、それを追うようにして発生した原発事故。

個人的にも本当に大きな人生の分岐点だったわけで、地震直後から思えば今のような未来を容易には想像ができなかったのは当然だろう。当時のポスト(Google Grantsで立ち上がれリス男)その周辺を振り返ると、もうなんかいろいろ大変だったなと思うわけです。

そんな暗闇の中に光を灯してくれたのが佐藤康雄氏が当時率いる、消防隊だったのかもしれない。

その佐藤康雄さんがTEDxSeeds 2011に出演された時のスピーチが素晴らしく、書籍を出すとわかった時には即時カートへ入れた。


Yasuo SATO [ 佐藤 康雄 ] – TEDxSeeds 2011

佐藤さんが書いた書籍は表題通りの原発対応時の決断についてのみではなく、消防庁への入社時から時系列にて紹介され、その際にどのような苦難に見舞われたのか、また、どのように乗り越えてきたのか、その際にはどのような思考法だったのか?そしてチームマネジメントから仕事に対する姿勢など、本当に学ぶに値する内容がぎっしりと詰め込まれた素晴らしい書籍だった。

仮に今年の1冊を上げろ、と言われたら迷いなく、本書を紹介するといってもいいほどの良書だ。以下は個人的なレバレッジメモだけど、一部を紹介したい。

なぜ、その「決断」はできたのか。/レバレッジメモ

なぜそうするのか
若いうちに、単なるスキルにとどまらず、なぜそうするのかという基本を徹底的に身体に教え込まれたことは、本当に身に付いた。事実を徹底的に調べて、今の枠組みにとらわれずに本当に重要なのは何か、ということを捉えなくてはいけない。

実体験で伸びる
本人の限界ギリギリ、あるいはこれを超えるのではというような、高いレベルの課題を実体験させることで人は伸びる。想定内に収めるような訓練ではなく、現場の状況に合わせて臨機応変に動けるように鍛え上げることが重要。

失敗したときこそ成長する
改めて自分を見つめ直してみると、仕事で成功した時よりも、むしろ失敗して冷や汗をかき、呻吟して苦悩したときこそ、周囲の方々に助けていただき成長できた。

海図と羅針盤
ただ単に船にのって大海原に漕ぎ出すのではなく、大事なのは海図と羅針盤

謙虚であれ
われわれは施主であるが、何かあった時に助けてくれるのは取引相手なのだし、施主だからといって相手に横柄な態度をとるとか、理不尽な要求をしてはいけない。自分の権勢が強いときほど、他人への思いやりや、痛みがわからなくてはならない。

足下を確実に固める
危機的な状況に陥ったときには、置かれている状況をしっかりと見つめ直すと、解決策が自然と見えてくる。下手に解決策を模索するより、足下を確実に固めるほうが、自ら地に足の着いた解決策が得られる。

目標を掲げる
自分自身が輝き、達成したいという目標を掲げ、協働する姿勢を引き出す実践こそが大切だ。

参謀の力
指揮者の判断を補佐する参謀の力を鍛えておくことが、臨機の処置の基本。誰が自分の神輿を担いでくれるのかを認識することから、上にたつ者の役割は始まる。上司の精神的な負担まで支えられてこそ本当の補佐だ。

聞いてよいことと悪いことの判断力
自分を飾ることなく、わからないことは何でも聞くことにした。その代わり、聞いてよいことと、聞いては恥ずかしいことだけは、しっかりと区別しようとこころがけた。

将来にわたって自分の宝となる大きな二つのこと

  1. 上司に言われてから仕事をやるのではなく、自ら問題点を抽出してその分析と解決策を考える姿勢。
  2. 仕事を進める上では、自分の中で必ず半日をひとつの区切りとした。自分ではこれを「半日1仕事」と呼んでいる。半日で終わらないものも多いが、途中経過も半日単位で報告するするようにした。

「できません」「わかりません」を前提にしない
原子力発電所の冷却作戦を決行できたのも、まず「できません」「わかりません」を前提にしないという平素の考え方が、長年の間に培われていたかたであろう。

本質がどこにあるかを把握する能力
危機対応には、瞬時に事案の軽重を判断すること、すなわち本質がどこにあるかを把握する能力が求められる。

責任を取ることを明確に
上の者が責任を取ることを明確に宣言することは、部隊、部下の動きに活力を与える。

重点思考
何かを決める以上、何かを捨てなくてはならないという覚悟も必要である。あれもこれも欲しい、すべてを完璧にという発想からは、判断のぶれと迷いが生じる。危機時の指揮の適否は、重点思考ができるか、それを貫徹する強い意志を持つか否かで決まる。危機管理で最も重要なのは、即応性、すなわち時間との勝負である。

経営陣をとりまとめる要諦
事務処理でも、災害現場の指揮でも、各署長は経営者である。彼らには、やるべき目標をしっかりと伝えて、責任範囲を示せば、自ら考えて動いてくれる。経営陣をとりまとめる要諦はここにある。

情報がなによりも重要
安全管理には、正確な情報がなによりも重要である。情報は決断の礎である。

戦術は現場の隊長に任せるのが鉄則
戦略は周知してある。戦術は現場の隊長に任せるのが鉄則である。見えない位置から細かい指示を出せば、隊員を殺してしまう。

ロアール・アムンセン
完全な準備のあるところに常に勝利がある。人はこれを”幸運”という。不充分な準備しかないところに必ず失敗がある。これが”不運”と呼ばれるものである。

まとめ

ここには書ききれないほどに素晴らしい内容が盛りだくさん過ぎて大変申し訳ないのだけれど、一部の紹介となってますが、私自身は今後も何度も読み返すと思うのですよ。それほどに素晴らしい書籍だったし、素晴らしい参考書でもあると思った。

最後に、個人的にではあるけれど、こういう意識は常に持っていたいなと激しく共感する部分があったので紹介したい。

放水に関して「できませんでした」ではすまされない。

これは福島第一原発での冷却作戦での記述ではあるけれど、これは消防としての自信であり、責任であり、使命感なのだろう。そしてプロがプロであるための義務でもあるのかなぁと思うのです。徹底的に情報を集め、戦略を練り、実行する。自分のテリトリーにおいて「できませんでした」ではすまされない。そんな意識を常に持ち、これからも進んでいきたいものです。

なぜ、その「決断」はできたのか。
佐藤康雄
中央経済社
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えっ?こんな時にGoogle Tag Managerについて書かないのかって?

アユダンテさんが素晴らしい記事を書いているのでそちらで確認しましょうね。
タグマネジメントツール「Google Tag Manager」についての紹介

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