MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体/感想


戦略論から下ネタまで、そしてメディアが好きで好きでたまらない、そんなメディア野郎ことNHNJapan執行役員の田端信太郎氏(@tabbata)の処女作となる本書をスルー出来るはずもなく、Amazonで発売のかなり前から予約したにも関わらず、手元に届いたのは発売日から10日後ほどと、本書の人気、期待度を読む前からまざまざと感じさせられた。

早速読み進めるにつれ、ご飯を食べる時間も惜しいほどに引き込まれることとなる。

良い部分を上げてしまうとこの書籍のすべての文面を記載しなければいけないほどに読み飛ばす箇所なんてものは1ページたりともないのだけれど、随所随所で垣間見えるのは素っ頓狂な例え話、これがまた読者の身近に感じられる例え話になっており、「あぁ、この人は本当にボキャブラリーに溢れて面白い人なんだろうなぁ」というのを文面からも感じらるのですよね。読んでいて清々しい気持ちにすらなってしまうのです。

必然性を感じないと振り向いてくれない

本署の中でも特に気になった箇所は以下の部分。

メディア消費者にとって「時間」こそが、もっとも貴重なリソースになっているということ。読者は「今ココ」で、自分がすぐにアテンションを振り向けるべき必然性を感じないと、コンテンツがどんなに良質であっても、その場で読もうとしなくなる傾向が、昨今、どんどん強まっている

これはメディアの中に広告を配信する(Google AdWordsはディスプレイネットワーク、Yahoo!リスティング広告はインタレストマッチ)私たちにとっても非常に重要な視点で、「アテンションを振り向けるべき必然性」を持ってして臨まなければ、大きな成果を上げることは出来ない。

そこで田端氏は「ストック⇔フロー」「参加性⇔権威性」「リニア⇔ノンリニア」という3軸でコンテンツの形態を分類するフレームワークを示している。ここではすべてを紹介することは出来ないけれども、「ストック⇔フロー」を少しだけ紹介してみよう。

ストック型コンテンツとは?

時間が経ってもコンテンツとしての価値が劣化しない、つまり、賞味期限が長いコンテンツ。例としてはウィキペディアがあげられる。

フロー型コンテンツとは?

ストック型の逆で、「鮮度が命」の、生鮮食料品のような「今、この瞬間」が勝負のコンテンツ。例としては新聞やテレビにでるニュースやスポーツなどがあげられる。

ストックとフローを行き来する視点の重要性

プロのメディア人として、ストックとフローを行き来する視点は常に意識する価値のある視点であり、ネタだしの発想法としては「常套手段」と言えるといい、以下のような分かり易い例えで表現している。

格差社会が叫ばれる今だからこそ、プロレタリア文学の古典、「蟹工船」を読もう

このような形でストックである「蟹工船」にフロー性を付与し、キッカケを作り上げることで「今読まねば!」という意味づけをすることができる。

一部の人にとっては当たり前といえば当たり前なのかもしれないけれど、個人的にはこういった分かり易い例えを用いて「ストック⇔フロー」を解説している本署はほんとに参考になった。今後、ブログを運営する際にだけではなく、自身のビジネスにも大いに参考になる視点だった。

まとめ

「一般ビジネスパーソンもメディアの知識が必要な時代」と第二章で使われているけど、これは本当にその通りで、メディアそのものの利用法と解読のリテラシーは僕たちの世界でも知っておかなければいけないことだと切に思った。

メディアが生活の隅々まで浸透してしまっている今、メディアを知る上でこれ以上、素晴らしい書籍を僕は知らない。

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ここで記載したのは本書の中の素晴らしい個所の氷山の一角に過ぎず、少しでも興味を持たれた方は是非ともご一読をお薦めします。

MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体
田端信太郎
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