戦略「脳」を鍛える/感想

戦略「脳」を鍛える

マイケル・ポーターに代表されるアカデミックな戦略論は、過去の成功例を「後講釈で定石化」している。したがって、それを学ぶことは、「イロハのイ」にすぎない。ちょうど、囲碁や将棋の初心者が、定石・定跡から学び始めるのと同じだ。
もちろん、定石・定跡を学ぶだけではプロになれるわけではない。さらに、プロ同士の戦いを勝ち抜くには定石・定跡を知った上で、新しい戦い方を作り上げる「プラスアルファの能力」を見につける必要がある。
経営戦略についても全く同じで、戦略論という定石を知った上での「プラスアルファの能力」が必要となる。本書ではその能力を「インサイト(Insight)」と呼んでいる。

このような見出しで始まる本書は、戦略というものがどういったものであるかを定義づけ、その戦略をいかに効果のあるものに仕立て上げるか?を事例などを持ちえて、より具体的に書き出しているボストン コンサルティング グループの御立 尚資氏による、本当に素晴らしい書籍です。

ここ数日頭の中で考えていたことや、若干もやもやしていたものが、本書を読み進めるうちにどんどん形になっていきました。

戦略「脳」を鍛える/レバレッジメモ

戦略とは?
戦略というものは、競争相手に対する優位性を作り上げることであり、定石を越えた戦い方のイノベーションこそが、戦略の本質である

戦略の定義
戦略とは「ありたい姿」マイナス「現状」である。つまり、「将来こうありたい」という理想の姿とを比較すると様々な差異があり、この差を埋めていく道筋が戦略であると定義できる
すなわち戦略とは「ありたい姿」マイナス「現状」であり、「ケンカの仕方」であると定義すると、「ユニークさ」を作り出すことこそが、勝つための要諦だということがはっきりする

創造的作業
パターン認識化された戦略論の定石は、ちょうど数学の公式にあたる。いったん、パターン化すると定石の順列・組み合わせが可能になり、これがユニークな戦略につながっていく。何かをモデルにして磨き上げ、新しいアレンジを加えて、精度の高いものに改良していくのが創造的作業の基本である

パターン化せよ
過去の戦略をベースに、別の戦略を組み合わせたり、別の見方をすることによって、ユニークなものを生み出す。ただしその際に、過去の戦略をしらみつぶしに当たり、「ああでもない、こうでもない」と順列、組み合わせによるトライ&エラーうぃ繰り返していたら、途方もなく時間がかかってしまう

優秀なコンサルタントに共通する能力
戦略コンサルタントが一人前になっていく上で最初に必要なのがパターン認識である。パターン認識できると、パターンをさまざまな角度から捉えたり、いくつかのパターンを組み合わせたりすることで状況を端的に把握することができ、より速く適した戦略の仮説が立てられるようになる。この力を高めるためには、物事の局面ごとに、「これはこういうことだ」というパターン化するクセをつけ、それを記憶していくことが有効だ

パターン認識が次の手を生む
いったん定石をパターン認識化してコンセプトワードでインデックスづけをしておけば、戦略策定能力がどんどん高まっていくことを覚えておいて欲しい。いろいろな雑誌や新聞の記事を読んでも、単に「おもしろい」と思って流してしまうのか、自らのパターン認識をより豊かにしていくのかで、大きな差がついていくのだ

可視化する
図で考えることは複雑な事象を構造化でき、有効な思考技術であるのは間違いない

平均化された情報は実態を表さない
多くのデータは何らかの加工を通じて、平均化されている。平均化された情報は、必ずしも実態を表さない。良い仮説を出すためには、まずは平均値情報をばらばらにし、個々のデータ全てを鳥瞰することが第一歩となる。特に、グラフ化してしまうと、たとえ平均値情報でも事実を表したデータだと思い込んでしまいがちなので要注意である

細分化より広げてみる
一つの分野を限りなく細分化して考えるのではなく、周辺分野にも思考を広げてみると、案外、成長のチャンスがあるかもしれない

アウトライアーの中にこそ、イノベーションの鍵がある
通常の商品開発プロセスや戦略立案の場合には、平均値から外れたデータはアウトライヤーとして、排除してしまいがちだ。しかし、アウトライアーの中にこそ、イノベーションの鍵があることが多い

アナロジーで考える
自分の業界でやっていることを他の業界の常識で考えてみる

多様性からの連帯
クライアント企業の内部ばかり見て、組織や会計制度といった側面の改善に集中している。そうではなく、クライアント企業の外、すなわち市場、競合、顧客を見て、クライアントの競争優位性をつくり上げる事が大事

  • 企業がケンカで勝つためには、戦略と併せて実行力が必要だ
  • 自分でモノを購入して得だとかおもしろいと感じるときにいったい何が起こっているのか、そのメカニズムはどうなっているのかと考える癖がついていなくては、様々なメカニズムは理解できない。購入心理に訴えかけ本来の機能とは違う価値を付加すれば、実際にかかったコストよりも商品を高く販売できるというように、アナロジーで考えられるようになる

戦略「脳」を鍛える/感想:まとめ

最近は通勤時間が長いので本を読む機会が増えています。このブログが書評ラボといわれる日はそう遠くないかもしれないですね。

正直ここにも書き出せないようなハズレの本も多々あるけれど、こういう最高の本に出会える事があるから、本を読むのは辞められないとさえ感じることのできた書籍でした。

特にこの戦略の定義や内容は、そのまま様々な業界での利用が可能ですし、色んな戦略をパターン化する+αでイノベーションがおきるのはSEM業界だって同じです。その為には、様々な業界での事例を学ばなければ、次のイノベーションには繋がらない。

今の自分には思うところがあり、じわじわと染み渡る良書です。是非とも、全ての方にお薦めしたい書籍です。

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