こころを動かすマーケティング―コカ・コーラのブランド価値はこうしてつくられる/感想


日本コカ・コーラ会長、魚谷雅彦氏の手掛けたマーケティングの書籍になります。

諸事情で急遽読まなければいけないこととなり、慌てて読み進めたわけですが、この本は読み進めるにつれて本当にワクワクさせられ、元気をもらえる書籍だと思います。マーケティングの原点にも見えるような内容がこの書籍にはあります。

こころを動かすマーケティング―コカ・コーラのブランド価値はこうしてつくられる/レバレッジメモ

転職について
ある程度のマネジメントのポジションで転職をした場合には、その人が来る前よりも、何かの新しいバリューが提供できなければ意味がない。

日本コカ・コーラの発想
競合他社から市場を奪うのではなく、新しい価値創造によって、清涼飲料のマーケット全体を大きくしていこうという発想

効果的なコミュニケーションとは
テクニックではなく自分自身が情熱を持って人生を積極的に生きること。それが他人にも影響するのだ。

ベストと思える取り組みをする
マーケティングという戦略には、コケルときもあるのです。関西弁でいえば「しゃーない」ということです。それよりも大事なことは、ベストを尽くすこと。その場その場で、ベストだと思える取り組みをする。そうすれば、何かが開けてくる。

顧客は見えているか
24時間、いつでもどこでも、顧客のことを考えよ
徹底的にターゲットとなる生活者をイメージする、徹底的に知ろうとする。どんな気持ちを持つ人なのか、想像してみる。どんな仕事をしているのか。どこに住んでいるか。どんな家か。年収はいくらくらいなのか。どこで利用するのか…。

外に出よ
販売の最前線に出向く事が重要である。オフィスで考えるのではなく、街を見ること。

現場に足を運んでいるか
モノが売れていく現場にこそ、マーケットの本質はある

戦略とは
戦略とは何をやるか、だけではない。何をやらないか、を決めることも戦略である。

やっぱり違うと思ったらいわないといけない
妥協を許さないことは、マーケティング上では非常に大事なことです。ギリギリまで考え、こだわり抜く。現実的な時間がある中では、最後まで妥協してはいけない。前に言ったことと違うことを言ってもいい。たとえ朝令暮改になったとしても、やっぱり違うと思ったらいわないといけない。

飛びぬけた商品を提供できているか
似たような商品で勝負しようとしていないか。「平均点」のマーケティングは失敗する。最も陥りがちなある危険は、これぞ消費者のニーズではないか、と平均的なモノを作ってしまうということ。
まずは小さな器をイメージし、その器に入れることにこだわり続ける。そうすると、いつの間にか器から溢れていることに気づける。

人の心を動かしているか
重要なのは、新たな価値を提供する意思をもつことです。それがブランドになっていく。ブランドの価値とは、最初からそこにあるわけではなく、自然に生まれる物でもない。つくっていくプロセスが必要なのです。そして生活者によって評価され、認められて、結果的にブランド価値は作られていきます。一方的に「つくるもの」ではなく、「つくられるもの」なのです。

関係者を巻き込んでいるか
何かを仕事にするときに、「とにかくこれをやって」とよくわからないまま仕事をするのと、全体を理解し、その仕事の意味を理解して進めるのとでは、モチベーションが全く違ってくる。だからこそ、早い段階から巻き込み、全体の考え方や見方を共有し、いつでもそこに戻るようにしていました。コミュニケーションを通じて、理解を高めておくということです。その意識が、コーディネーターたるマーケティング担当者には求められます。

常識にチャレンジできるか
これまでのやり方で本当にいいのか、従来どおりのやり方に問題なないか。これを常に自問するような発想こそ、マーケティングに求められているのです。

イノベーションとは
サービスをつくることだけがイノベーションではありません。これほどまでに存在感があり、すでに存在しているものを、環境や時代に合わせて変えていくこともイノベーションなのです。

マーケティングとは何か
世の中は人を中心にできています。人の行動や心理、そういうものに興味を持ち、そこに何かの新しい価値を作っていこうという思いであり、こだわり、志だと思うのです。そこから、人の喜びや楽しさ、便利さ、感動など、人の心を揺さぶり、動かすようなものを考えていきたい、と思う気持ちです。
その意味では、優秀なマーケターとは、自然に育っていくものです。人について考え、人について思い、人を喜ばせたい。人の心を動かしたい、そういう思いを持つことこそが大切であり、頭でっかちにマーケティングを捉えすぎると、マーケティングの真髄の部分には行き着く事ができない。

阪急電鉄創業者、小林一三氏
将来への志は常に持ちなさい。そして、日々の足元のことをしっかりとやり遂げることこそが、その志に到達する最も近道なのだ

こころを動かすマーケティング―コカ・コーラのブランド価値はこうしてつくられる/まとめ

基本的にはレバレッジメモの多さからして非常に楽しく読むことができた良書だったわけですが、mixbeat showcaseにて本書を取り上げ、議論したところ、さまざまな矛盾点が浮き彫りになりました。

そもそも、現場の声を反映させサントリーの烏龍茶の対抗策として、何故烏龍茶で対抗せずに爽健美茶で勝負したのか?これはブルーオーシャンを狙ったにしては、ブレンド茶というカテゴリーは十六茶の方が先であって、決してブルーオーシャンではなかった点や、現場の声を生かさないのはただのエゴであるという点。これらのこと議論しながら進めていくと、坂本竜馬的に運が強いという一言で片づけられるだけでは?みたいな議論にもなりました。

書籍ってのは1人の視点から書かれているので、本書以外にもさまざまなコカコーラ本を読むことでもっと解き明かされることと思います。やはり一つのことに対してさまざまな視点で情報を入れていくの重要ですね。日々痛感します。

ともあれ本書はなかなかお薦めですよ。

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