マネー・ボール 奇跡のチームをつくった男/感想


題名から言ってただの野球論かと思いきや、野球論だけでは語りつくせないほどに面白く、分析、指標、重要要素の選び方など、さまざまな視点で描かれた素晴らしく面白い書籍で、個人的にはこの”重要要素の選び方”周りが自分の仕事にも通じる部分が多く、非常に参考になりました。

私自身もずーっと野球部だったので野球論的なものは好きなのですが、桑田真澄氏の心の野球-超効率的努力のススメはスーパー精神論なのでちょっと違うと思うのですよ。(だって1日10本しかフリーバッティングしかできなかったらうまくなるわけがないわけで…読み物としては吉)といったこともあり、マネー・ボールのようなこういったすごく論理的に野球を詰めていくような本は今までにもなく、本当に素晴らしいと思うのですよ。

マネー・ボール 奇跡のチームをつくった男/内容

本書は1997年にアスレチックスのゼネラルマネージャーに就任した元メジャーリーガー、ビリー・ビーンが、セイバーメトリクス(Sabermetrics)を駆使して、いかに低予算でチームを強くすることを実現させるかを書いた書籍です。

通常、メジャーリーグなどでは高額な年棒の選手を引き抜いてチームを強くしていくイメージがありますが、当時のアスレチックスは財政難で資金的な余裕がなく、いかに安くて効率的な選手を獲得するか?ということに全てを捧げていました。

で、チームが勝利をあげるためにここで”出塁率”というものに注目します。盗塁やバントなどのアウト数を増やす可能性が高い攻撃はどれも賢明ではないといいます。”出塁率”とは、簡単に言えば、打者がアウトにならない確率ですね。よって、データの中で最も重視すべき数字は打率でも長打率でもホームラン数でもなく、”出塁率”なのだそうです。だからこそ、出塁ができるのであれば、四球だってヒットだって変わらないと。

そこで”出塁率”が高く、年棒の安い選手と次々に契約してチームを作っていくストーリーです。

僕らが野球やってた頃は四球や死球とかばっかりもらっても褒められなかったなぁ。。。

マネー・ボール 奇跡のチームをつくった男/レバレッジメモ

何ができないかを見極める
自分は何ができるかだけではなく、何ができないかを頭に入れておく。打てない球には手を出さない。

肝に銘じている5つの原則

  1. たとえ現状でうまく行っていても、改善は常にプラスになる。現状維持などしょせん不可能。懐がさびしいからには長期的改善は無理なので、短期的改善を目指すしかない。てこ入れし続ける必要がある。てこ入れを怠ると、痛い目に遭う。
  2. はっきりと必要に迫られてしまったら、すでに手遅れ。条件が悪くても、呑まざるをえなくなる。余裕をもって見送るぶんには、またあとで取り返しがつくが、焦って高い買い物をすると、取りかえしがつかない場合がある。
  3. うちにとって各選手がどれぐらいの価値があるのか、正確に把握せよ。正確にわかっていれば、きめ細かく値段をつけられる。
  4. 自分たちが本当に必要とするものを探せ(相手が売りたがっているものに釣られるな)
  5. どんな取引をしても、メディアはどうせ好き勝手に騒ぎ立てる。(IBMのCEO)ルー・ガースナーなら、人事異動をするたびにトップ記事で報じられるなどという、ばからしい自体には直面しないだろう。記者全員が「コンピューターについて知り尽くしている」と自負するはずがない。ところが、バットを一度でも握ったことがある人間は「野球について熟知している」と思い込む。新聞は無視するに限る。

マネー・ボール 奇跡のチームをつくった男/まとめ

レバレッジメモとして引用する箇所はそんなに多くはありませんが、本書は多くの場面やビジネスにも流用可能なことが書き記されています。アスレチックスを自分の会社や自分が置かれている立場で見ることができれば、さまざまな発見を得ることができるでしょう。

また、丸谷才一氏が本書の最後で下記のようにまとめていて、これだけでも見ればどのような書籍なのかがわかりますので抜粋します。

マイケル・ルイスが書いたものは頭の使い方、ものの考え方の本だった。一般に人間はとかく在来の考え方へ、方式にとらわれがちで、新しい視角からものを見ることができない。その分野その領域の、約束事や先例、因襲や官僚主義から脱するのがむづかしい。つまり他人と同じことをする羽目になって、その結果、これまでの勝者を抜くための条件を手に入れがたい。

しかしものの考え方を改めれば話が違う。別の天地が開け、新しい勝者となる可能性が生じる。思考と生き方のためのマニュアルを彼は書いた。

こんなに面白くて為になる本は珍しく、おそらく2011年の振り返ってこのブログ内でベスト10の書籍を上げるとしても、必ず上位に食い込んでくるほどの良書だと思います。野球に興味がない方にも激しくお薦め。

マネー・ボール 奇跡のチームをつくった男
マイケル・ルイス
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