貧乏はお金持ち──「雇われない生き方」で格差社会を逆転する/感想

この時代には、会社はひとを雇おうとしない。その代わりひとが会社そのものになる。これは避けがたいことだ。
by ダグラス・クープランド

こんなフレーズで始まる本書で著者の橘玲氏は「自由に生きることは素晴らしい」といい、自分の人生を自分で選ぶ、これはもちろんサラリーマンという生き方を否定しているわけではなく、世の中に蔓延する「社畜礼賛」が気味悪いだけだといいます。

その為には市場と資本主義を理解し、人的資本を最大化するべきであると語り、この為にはマイクロ法人、要は1人で運営している会社をつくることによって、もう1つの人格(法人格)が手に入り、そのことによってさまざまな不思議なことが起こるということを紹介しており、その中の例でいえば、収入に対する税負担が大幅に低くなるということ、さらには、まとまった資金を無税で運用できるようになるということ、そのうえもっと驚くことに、多額のお金をただ同然の利息で、それも無担保で借りることが出来るようになるということ、これらを本書内で種明かししています。

貧乏はお金持ち──「雇われない生き方」で格差社会を逆転する/レバレッジメモ

法人とはなにか?
法人とは文字通り「法的なひと」のことで、ひとではないものを、法律によって人と同じように扱うことに決めた不可思議な存在だ。会社は法的な「ひと」であるが、株主という自然人に所有される「もの」でもあり、代表取締役という自然人がいなければ何もすることができない。ひととものとのこの錯綜した関係が、さまざまな法人の不思議を生み出す。

マイクロ法人の経営戦略

  1. マイクロ法人と個人の(家計)で税務上の所得がない。
  2. マイクロ法人もしくは個人(家計)で財務上の利益が計上できる。

これが会計上の理想状態である。このようにして生まれた財務上の利益は、税務上の所得ではないのだから無税で投資することができる。投資収益も会計上の工夫で非課税化できれば、運用利回りはその分だけ向上する。

富を生み出す原理原則

  1. 売上(収益)を増やす。
  2. 費用(コスト)を減らす。
  3. 資産の運用利回りを上げる。

会計上のテクニックで損失を利益に見せかけることはできても、ほんものの利益に変える錬金術はどこにもない。

法人を使った節税術

  1. 法人で生活経費を損金として、個人で給与所得控除を受けることで、経費を二重に控除する。
  2. 家族を役員や従業員にして、役員報酬や給与を法人の損金にしつつ給与所得控除を得る。
  3. 自営業者や中小企業向けに日本国が用意した優遇税制を活用する。

マイクロ法人の資金繰りのポイント

  1. 買掛金を多く、売掛金を少なくする。
  2. 固定資産よりも流動資産を保有する。
  3. 資金調達する際には、低利の資金をもって借りておく。

貧乏はお金持ち──「雇われない生き方」で格差社会を逆転する/まとめ

本書の中では西原理恵子氏の著書「脱税できるかな」の中身で税金を8割近く値切った実話の話なども添えられ、このくらい税金ってのは曖昧なもので、恐ろしいことに値切ることができてしまうということも紹介していて、読んでいるだけも面白い。

その他にも一般的なことではあるかもしれないが、自宅にマイクロ法人を登記したシンプルなケースでは、家賃(マイホームの場合は家賃相当分)や水道光熱費(電気・ガス・水道)の二分の一は損金にできることや新聞・書籍の購読料や電話・携帯電話の通信料、インターネットの接続料金なども経費になるし、場合によっては法人の経費で外車を買ったりもできることなどを詳しく解説しています。

個人的にはこの外車を買えるテクニックが凄かったw 詳細は”社長はなぜ中古のベンツを買うのか”という章を参考にして頂きたいと思います。

本書は税務のテクニック的なことばかり書かれている印象がありますが、実はそんなことばかりではなく、下記のような文面で締めくくっています。本書の一番重要な箇所かもしれないので記載していきます。

会計や税務の知識があれば、法人と個人の複数の人格を使い分けることでほとんどのことが可能になる。だがひとつだけ、この方法では意のままにならないことがある。それは、「お金を稼ぐ」ことである。
※中略
私はずっと、自由とは自らの手でつかみとるものだと考えていた。だがようやく、それが間違っていたことに気がついた。自由は、望んでもいないあなたのところに扉を押し破って強引にやってきて、外の世界へと連れ去るのである。

本書に書かれているような節税対策を実際に行うかどうかは別として、こういう考え方もあるんだということを知っておくことも非常に大事だなと感じました。

うーん、もっといろいろ勉強せねば。と考えさせられる書籍で、これから会社にするか、LLP、LLCにするか、フリーランスでいくかなどの時期に差し掛かっている人にはかなりお薦めの書籍だと思います。

※レバレッジメモで記載している内容が本当に通用するかどうかは保障しません。

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