戦略プロフェッショナル―シェア逆転の企業変革ドラマ/感想


どんな規模のビジネスを展開するのであれ、「戦略理論」は不可欠である。

競合の分析から市場セグメント、価格の設定に至るまでありとあらゆるところで「戦略理論」は有効に働くものだ。

本書は著者である三枝 匡氏の実話を元にし、実際にどのようなプロセスで「戦略理論」を組み立て、医療機器の市場シェアを奪っていくのかを生々しく描いたリアルなビジネス小説だ。

三枝 匡氏といえばV字回復の経営の著者でもあり、これほど感銘を受けた書籍はなかなかお目にかかることはないほどに素晴らしかったので、著者の書籍という書籍を買い漁っていた。本書はその中の1冊。

戦略プロフェッショナル―シェア逆転の企業変革ドラマ/レバレッジメモ

競争のルールに穴を開ける
事業戦略を成功させるには、現在業界で当たり前になっている競争のルールに穴を開けなければならない。つまり事業に成功する人は、自分で新しい競争のルールを作り出していく人である。

勝利のコツ
どんな小さなセグメントでもいいから、その分野でナンバーワンになるのが勝利のコツ。

先が見えなくても…
曲がった道のその先が見えないからと言って、じっと座り込んで考えていても、何も始まらない。

トップの役割
トップとして部下に重大な支持を与えるためには、トップ自身が戦略的な判断の視点、見識、センスを持つことがどうしても必要である。そのためには、トップ自身が勉強して、ある程度の戦略理論の基礎を身に着けておかざるを得ない。

優秀な戦略コンサルタントを雇ってもうまく行かない
いつの時代も「優れた戦略」は「優れたリーダーシップ」と結びついてこそ、初めて大きな効果を生む。

情報は目の前にある
その気になって見れば、情報は目の前にたくさんあるのさ。それに意味をつけて、社内に発信してくれる奴がいるかどうかだ。

価格の決め方
価格は相手が受けるメリットで決まるものだ。こちらのコストではない。

成功する戦略
会社の体力を考えてまず「戦いの場」を絞ること、そしてそこに、社内のエネルギーを「集中」させていく。その「集中」を実行するために、組織に対し「無理を強いる」「不安を感じさせる」という面を必ず持っている。

実践的戦略プロフェッショナルの条件

  1. トップとして、強いリーダーシップを発揮する覚悟があること。その目標がなぜ達成されなければならないのかを部下に説得し、士気を鼓舞し、創意工夫を促し、「共に考え、共に戦う気概」を見せなければならない。
  2. 新しい戦略を考え出す作業手順をマスターしている事。作業のステップごとに、どんな選択肢があるのかきちんとチェックし、責任者として自分でそれを詰めていく「緻密さ」を持っていること。
  3. 誰もやったことのない新しい戦略を実行に移そうというのだから、多少のリスクは気にせず、また何があっても「夜はグーグーとよく眠れる」正確であること。

戦略は十分にシンプルか
私の経験では、良い戦略は極めて単純明快である。逆に、時間をかけ複雑な説明をしないと理解してもらえない戦略は、だいたい悪い戦略である。悪いという意味は、やっても効果が出ないという意味である。

経営戦略の要諦
「絞り」と「集中」である。企業戦略はもともと「絞り」「捨てる」ための道具そのものだとも言える。

セグメンテーション、成功の法則
セグメンテーション後、しつこくフォローするシステムを構築することが必要不可欠だ。

戦略プロフェッショナル―シェア逆転の企業変革ドラマ/まとめ

本書に抱えている内容である、戦略理論は決して真新しい内容ではない。ましてや、セグメンテーションなどはほとんどの企業で取りいれている可能性もあるだろうし、さまざまなビジネス書にも当たり前のように登場するし、単純明快過ぎる内容かもしれない。

しかし、三枝 匡氏が言うように良い戦略は極めて単純明快なのである。その為、本書も非常にシンプルで単純明快に仕上がっているが、このシンプルなことが出来ていない企業が大多数なのではないかと感じる。

実際の自身の経験と兼ね合わせてみると、シンプルが故、単純明快過ぎる故に本質的に理解することを怠り、完全なる盲点になっているのではないだろうかと思う。

本書はそんな視点を取り戻すために最適な良書だと思う。自戒も含め、しってるつもりになっている方々に是非ともお薦めしたい。

ただし、個人的にはV字回復の経営の方がインパクトが強く、激しくお薦めしたい。ともあれ、三枝 匡氏の書籍はいずれも読みやすく、素晴らしい書籍ばかりだ。

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