金融資本主義を超えて―僕のハーバードMBA留学記/感想


昨年もそうだった気がするけれど、どうも年末が差し迫るこの時期は仕事とPVが慌ただしく過ぎていく気がして、書籍をじっくりと読むという、僕にとって至福で掛け替えのない大切な時間を過ごすことがなかなか味わえないでいることが多い気がする。

そんな時期に素晴らしい書籍に出会ってしまい、寝る間も惜しんで読むふけってしまった。今回はそんな書籍を紹介しようと思う。

ネットで生保を売ろう!を読んでからというもの、著者の岩瀬大輔氏が書き出す文章の”楽しさ、愉快さ、論理的具合”に引き込まれ、いわゆる岩瀬大輔熱が収まらない状態であることは否めない。

そんな色眼鏡で読んでいるので、過剰に反応している部分を加味したとしても、本書はただのハーバードMBA留学記にあらず、起業家、労働者などといった分け隔てはなく、働くものすべてにとって何かしらのきっかけを与えてくれる書籍なのではないかと思う。

金融資本主義を超えて―僕のハーバードMBA留学記/レバレッジメモ

グレーの問題は必ず悪い方向に流れる
誰しも、守るべきプリンシプル(principle)、信念を持っているべきだ。リーダーシップの本質は、行き着くところはインテグリシティ(integrity)、すなわち人格の誠実さ・高潔さだと思う。インテグリティを失ってしまったら、どうしようもない。白・黒と判断せずに、グレーの問題は必ず悪い方向に流れる。

人生はマラソンのような長期戦
短期での損得勘定は分かるが、人生はマラソンのような長期戦。

とあるヘッジファンドのO氏
僕たちの仕事は、目をつぶってやったら勝つ確率も負ける確率も五分五分のところを、いかにして方法論と規律をもって七対三の確率に変えるか、というものだ。そして、その三のときの損失を最小化して、七で勝つときの儲けをいかに大きくできるかが勝負の分かれ目だ。いずれも、何度もオン・ザ・ジョブで訓練していくことで身に着けていくものだ。

仮に誰かが損をしても責めるようなことはしない。損を責めると、健全なリスクすら取らなくなり、元も子もないからだ。我々が徹底してやるのは、投資判断の基となった分析のどこに読み違いがあったのか、振り返って反省することだ。その分析に過ちがなかったなら、仮に損をしてもやむを得ない。

ウォーレン・バフェット、「セックスを老後の楽しみに取っておくな」
君たちは、セックスを歳をとってからの楽しみにとっておくようなことはしてはいけない。やりたいことがあるなら、今すぐやりたまえ。私は自分が選んだ仕事が楽しくて楽しくてたまらず、毎日職場まで文字通りタップダンスをしながら行っている。

アントレプレナーシップの定義
いま自分が持っている経営資源にとらわれず、信じる事業機会を執拗に追い求める。

金融資本主義を超えて―僕のハーバードMBA留学記/まとめ

とあるヘッジファンドのO氏の発言は、僕自身も常日頃心がけていることでもあり、個人的には大きな共通点を見出したのでレバレッジメモに記載した。

また、以前の記事で将来のビジョンが思いつかない人の為の、プランド・ハップンスタンス理論という部分だけを抜き出して取り上げてもいる。

実際にはここには書ききれないほどに多くの素晴らしい内容が盛り込まれ、読み進めるうちに自然と思考をめぐらし、書籍の中に引き込まれていくようだった。

ハーバードMBAへの留学を計画している人のみならず、物事の捉え方、ビジネスへの取り組み方といった面でお役立ちすることは勿論、岩瀬大輔氏という一人の人物の半生を物語のように楽しめる書籍なのではないかなと思います。激しくお薦めしたい一冊です。

余談になるけれど、こういった風に論理的、且つ合理的に、時に熱く語れる筆者が経営陣として参加しているライフネット生命の今後は、12年前半にもマザーズ上場を計画しているという噂もあり、やはり楽しみで仕方ない。

金融資本主義を超えて―僕のハーバードMBA留学記 (文春文庫)
岩瀬 大輔
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