ネットで生保を売ろう!/感想


ライフネット生命の副社長である岩瀬氏による、ライフネット生命の立ち上げから現在までを描いた、生々しい記述が多い大変興味深い書籍です。

ライフネット生命といえばこれまで業界のタブーであった付加保険料率(生命保険の「原価」)の開示を行い、さまざまなメディアで取り上げられたのも記憶に新しいですな。

そもそもライフネット生命の誕生は、岩瀬氏がハーバード経営大学院(HBS)在学中に書いていたブログ、ハーバード留学記がきっかけに(!?)なり、その才能に対して多くの投資家が集まり、親子ほど歳の離れた現社長である出口氏が引合され、それからもさまざまな才能を持った人たちが巡り会って一つの屈強な組織になっていくという、ドラクエも真っ青なノンフィクションのストーリーというのも読むものを引き付けます。

そんなこの書籍が面白くないわけがないのです。

ネットで生保を売ろう!/レバレッジメモ

「地味」な業界にチャンスあり
商売はだれもが殺到する「ホット」な業界よりも、余り目をうけられない「地味」な業界の方がチャンスは大きいし、面白い。

非効率こそチャンス
非効率が温存されている業界は、イノベーションを通じて大きな価値を生む可能性を秘めている。

売れる、いや、売れない。そんな議論に意味はない
禅問答のようなものに意味はない。その対策として市場セグメンテーションの考え方がある。どういう属性の人たちなら買ってくれるか。そして、そのような人は、どのくらいの人数いるのか、どうやったらアクセスできるのか?

松本大氏のアドバイス

  1. リスクのないところにリターンはない
  2. 直感を信じて行動せよ
  3. 人は一人では何もできない。仲間との信頼性は最初から必ずしもあるものではないけど、ゆっくりと歩みながら築いていけばいい

ハーバードビジネススクールのアントレプレナーシップ

  1. 現在、コントロール下にある経営資源にとらわれることなく、事業機会を執拗に追及していくこと。
  2. 自分が持っている資金や技術、知っている人材などに一切縛られることなく、「世の中に何が必要か?」ということだけを、ひたすら考え抜き、行動する。そうすれば、ヒトもモノもカネも、必ずついてくる。

大きな夢を見た方がいい
人間は希望することの、99%は手に入らないかもしれない。でもね、考えてごらん。望むことをしなければ、100%手に入らないんだよ。だったら、できるだけ大きな夢を見た方がいいさ。

マーケティングで大事なこと
アートとサイエンス、感性と論理の双方が大切である。

贅肉を徹底的にそぎ落とし、太い峰を作る
切ること、捨てること、はとても難しい。全ての事を考えて、全て用意するのは、実は簡単。

MBAのプライシング(価格設定)
価格を決める際には、(1)競合企業の価格水準、(2)コストに適正な利幅(マージン)を上乗せした水準、そして(3)顧客から見た「払ってもいい水準」というのがある。

成功する方法
焦らずに愚直に、やらなければいけないことをコツコツやって下さい。それしか、成功する方法はありません。

情報は発信している人のところに集まる
世界の保険市場について情報を集めたかったら、一番いい方法がなんだかわかるかい?それは例えばコンサルティング会社に高い報酬を払って市場調査をすることではなく、こちらから皆が興味を持つ情報を発信することなんだ。情報は、発信している人のところに集まる。刺激的な内容で発表を行えば、こちらから情報を取りに行くまでもなく、向こうから集まってくる。

ネットで生保を売ろう!/まとめ

ここでは記載していない内容ですが、金融庁とのやり取りや、仲間が続々と集まっていく流れ、投資家たちが納得してしまうロジックの組み立てなどなど、非常に有意義な情報が多く、また、保険業界の裏側なんかの情報も数多く盛り込まれている書籍です。

個人的にも保険についてはいささか(??)な部分が多かったっ時期だったので、本書を読んで、さまざまなリンクを調べ、保険に対する疑念が腹落ちしました。

非常に役に立つような書籍なのに、アドベンチャーの如く読み進めるのを止めることができません。更には読み進めるうちに、いつのまにかライフネット生命の応援団になってしまう…。

私の周りでライフネット生命の加入者多い理由がやっとわかった気がします。私も早速見積もってしまったのは言うまでもありませんな。。。

チームのあり方、経営者のあり方、事業のあり方を改めて考えさせられる、素晴らしい書籍です。

ネットで生保を売ろう!
岩瀬 大輔
文藝春秋
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