グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ/感想
今年に入ってから書評という書評をほとんど書けていないことに苛立ちを覚えながらも、ようやく書く事ができることに何とも言えない喜びのようなものを感じているわけではありますが、本を読むのがだいぶ遅くなった気がするのは歳のせいでしょうか…。さまざまな要因があるにせよ、その要因の一つが、紛れもなくこの一冊であることは間違いないでしょう。
本書は私たちに密接に関連するGoogle AdWordsやGoogle アナリティクスの誕生秘話からその裏側の仕組みまで詳細に描かれている。更にはSEOに対する考え方や、Gmail、GoogleChrome、Android、Google+の戦略、GoogleWAVE、GoogleBazz、中国市場徹底の裏側まで。そしてジョブズとの確執、元グーグラーが作ったとされているFoursquareとtwitterの真実や、facebookによってかき乱される現在のGoogle内部の話まで内容は盛りだくさん。600ページ強の書籍を1ページたりとも読み飛ばすことはできない。
著者のスティーブン・レヴィはGoogleに認められ、社の内部から直接の取材を許された唯一の存在である為、これほどまでに詳細に描いている書籍は今後も出ることはないのではないだろうか。
Googleの創業者、ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリン、自分の興味を追及する自由を与えられるモンテッソーリ教育によって育った2人は、Web上の経済学そのものを変化させた。その詳細を外部から知るには、本書は必要不可欠の一冊になるだろう。
ただし、この記事で本書のすべてを紹介するのはほぼ不可能。ここでは自身が参考なったものだけをつらつらと綴って行こうと思う。
グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ/レバレッジメモ
ラリー・ペイジ
- 手元に資金さえあえばニコラ・テスラはもっと偉大な業績を残せたはずだ。僕はこの教訓から学びたい。より良い世界を創るためには、発明以外にも多くのことに手を染める必要がある。
- ユーザーは決して間違いを犯さない。システムで間違いを犯すのは決してユーザーの方ではない。
- 別の視点から物事を見ると予想もしない解決策が生まれることがある。大局的見地からモノを見る人間が必要なんだ。
- 検索で次に目指いしたいことは、ユーザーの好みを知り、ユーザー自身が聞いたことがなくても知りたがるはずの情報を取ってこられるようになるということ。
セルゲイ・ブリン
- Googleは人間と同じくらい賢くなってほしい。ユーザーが質問を思いつくのと同時に答えが戻ってくるのが理想だ。
- 僕はGoogleをこんな風に思われる存在にしたいと考えている。『何かをググったのであれば、それ以上調べる必要はない。まだググってないなら、何も調べていないのと同じことだ。以上』
マット・カッツ
本当は誰にもSEOを学ぶ必要のない世界が理想なんだ。でも存在していることは事実だし、自分のサイトを目立たせたいと考える人々は後を絶たない。だから僕らにできるのは、積極的にかかわって『これは論理的に問題ないのでやるべきだ。こっちはリスクが高いのでやめておいた方がいい』といった意見を述べることだと思う。
エリック・ビーチ(人類史上最大の成功を収めた広告システムを開発したGoogleエンジニア)
僕は広告が大嫌いだ。
アミット・シンガル
乗客には何がおきているか絶対に気づかせてはならない。いつの間にか乗り心地は改善され、飛行時間も短縮されているということが理想だ。
アーサー・C・クラーク
最も優れたテクノロジーは魔法と見分けがつかない。
ページランクの語源
ウェブページを指しているだろうと考えた人が多いが、実はラリー・ペイジの名字を表している。
Google AdWordsについて
- 品質スコア方式は、広告は媒体と広告主の2者間のやりとりではなく、常にユーザーを含めた「善意の三角形」であるべきだ。
- アドセンスでは、広告主がGoogleに支払う金額の68%がサイト運営者の収益になる。残りの32%がGoogleの収益だ。
- 一度始めたらそのままずっと続けられるだけでなく、結果を測定し、利益が上がっている限り、再投資を繰り返せるタイプの広告だ。Googleにとって広告とはユーザーが求めている答えであり、解決策である。
Google アナリティクスについて
Google アナリティクスを利用するにはGoogle AdWordsの顧客である必要はなかったが、それが提供したデータはGoogleの広告システムの価値を喧伝する効果があった。それは新規顧客の獲得に貢献しただけでなく、既存の顧客層にもGoogleの広告への投資は賢い選択肢だったと再確認させる役に立った。「Google アナリティクスは余分の収益を30億ドルほど生み出している」と陳天浩は言う。「より多くの知識を得た者は、より多くのお金の使い道を知るということだ」
その他
- 邪悪になるな(Do not evil)、邪悪なものを知れ(Do know evil)
- 検索リクエストの3分の1はGoogleにとって初めての言葉
グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ/まとめ
まとめ切れてない感はご容赦願いたいところではあります。本書は読み物としても素晴らしいが、やはりこのブログを読んでくださっているクラスターの方々にこそ是非手に取っていただきたい書籍だと思う。少なからずリスティング広告、SEO、アクセス解析、などに携わる方々には必読書になることは間違いないだろう。内部事情から知ることで、今後の流れや、特定のサービスやカテゴリーが変動期にある時のGoogleの動きが少なからずわかるようになるはずだ。
Gmailのサービス開発から収益化までの道のりは大変興味深いものがあるし、自身で何かしらのサービスを提供したいと思っている人たちには非常に参考になる個所も多いだろう。そしてGoogleのダブルクリック(DoubleClick)買収によって始まったアドセンスのcookieの仕様変更からのディスプレイネットワークの台頭、このあたりの内容はリスティング広告プレイヤーには必読となるだろう。
ほんの一部を紹介すると、従来、アドセンスの利用していた独自のcookieはユーザーがそのウェブサイトにアクセスしたと記録するクリック反応式だったのに対し、ダブルクリックではウェブサイトを訪れたユーザーのコンピューターにダブルクリックのcookieを埋め込む方式をとっており、買収後はアドセンスもこの方式を採用し、一つのcookieによってインターネット上のほぼすべての場所でユーザーのアクセス履歴を追及できるようになった。
これにより、強化版cookieを利用してリターゲティング広告に乗り出し、その売り上げは「驚愕すべき金額」と2010年9月に発表されたのは私たちの記憶にも新しいものだ。
※この時点でリスティング広告関係者は本書を手に取らずにはいられないはず!!
ここで紹介できたのはほんの1部に過ぎない。この他にも多くのGoogleメソッドが紹介されており、本書を開く度に何とも言えぬ高揚感を得ることができる。リスティング広告に携わるものであれば是非、本書を手に取っていただきたいと切に願うところであります。
twitterやfacebookの台頭により、追われる立場から追う立場へ移行したGoogle。今後の展開が気になるが、それはまだもう少し先の未来になるのでしょうね。
今年に入りまだ10冊程度しか読めていないが、間違いなく一番お勧めできる書籍です。
阪急コミュニケーションズ
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