リブセンス<生きる意味> 25歳の最年少上場社長 村上太一の人を幸せにする仕事/書評


史上最年少上場社長として2011年12月にマザーズに上場したリブセンス。そのリブセンスが東京証券取引所へ上場市場を10月1日付で変更すると発表したのは記憶に新しいだろう。約10カ月でのスピード昇格であり、1部上場企業としても最年少社長の冠付きだ。

そのリブセンス、主に「お祝い金」などで有名になったアルバイト情報サイトを運営し(現在は複数あり)、実は上場前から僕たちの業界では何かと話題になっていて、さまざまな角度から多くの情報が入ってきており、個人的にも多くの学ぶべき箇所があった。そういう意味でも興味深く、本書を手にしてみた。

話を戻そう。

本書は多くの方々に大きな影響を与えるであろうと僕は感じた。それほどリブセンスの社長である村上太一氏はこれまでの業界の成功者のイメージとは逸脱しているといっても良いかもしれない。僕にその良し悪しは判断はつかないけれど、少なくても選択肢の1つとして有っても良い会社、または、今後は無くてはならない会社になるのではないかとも思う。

「通貨社会」から「評価社会」へ、などと騒がれている昨今でも、リブセンスはそれを実践して結果をだしているのだと思う。いや、この表現だと少し語弊があるので訂正しよう。「評価社会の思想を持ちながらにして、通貨社会の中で結果を出すことができる」ということを証明している企業なのかもしれない。その証拠が東証1部への上場でも証明されている。

決して多いわけではないだろうがこれまでの僕の経験からいえば、本書を読む限りではここまでお金に無頓着(自身のお金に限る)な経営者も珍しいだろう。本書の発行時点ではマザーズの上場企業の社長が会社に近い8畳1間に住んでいて、これが快適だといい、上場の認証を受けた日には1人で唐揚げ定食を食べていたという…。

僕らの世代にはなかなか理解されにくいかもしれないが、これが今の世代なのかもしれない。根本から理解することは難しくても、受け入れることはできる。

ここで上げたような内容だけではなく、村上氏の幼少期から親の子育てへの姿勢など、さまざまな角度から見ても本書は面白い。

以下は個人のレバレッジメモ(というよりも村上語録)なので、ネタバレ注意。

リブセンス<生きる意味> 25歳の最年少上場社長 村上太一の人を幸せにする仕事/レバレッジメモ

既存の仕組みを知る大切さ
事業がうまくいくためには、新しい仕組みが必要になります。新しい仕組みを作るためには、既存の仕組みをどのくらい知っているかがカギになります。

Why?
コンビニにふらっと立ち寄っても、商品などについて、どうしてこうなんだろうと関心を持つ人と、なにも感じない人とでは、大きな違いがあります。

お金だけでは動かない
お金のために人は働かない。それはもはや大きな流れです。欲しいのは精神的な豊かさだと思うんです。それ以外は普通でいい。普通で十分なんです。実際、無理に普通を超えた成長を目指そうとして、社会がおかしくなってきたのではないでしょうか。

必要とされること
真の安定というのは、自分自身にスキルがあることです。重要なことは自分の役割を見つけることだ。これをうまく見つけられないと、成果もあげられないし、幸せになれない。

文化となる
なくなったら困るような、文化となるウェブサービスを作るのが目標です。

当事者意識
テレビを見るときには当事者意識を持ちながら、経済番組を見たり、プロジェクトストーリーを読んでいた。書籍もそうだ。大事なのは物事との向き合い方なのだ。

ビジネスの魅力
ビジネスの一番の魅力は世の中の課題を解決できることではないか

仕組みを作る重要性
大事なのは仕組みを作れることです。例えば営業であれば、たくさん訪問したというよりも、仕組みを作れることを重視します。ただ、新しい仕組みが作れる人は、そう多くはない。

課題を解決する仕組みづくり
どこに不便があり、とうすれば不満を持っている人を満足させられるのか。それを解決する仕組みを作ることが大事。

まとめ

村上氏にとって利益をあげることが最大の目的ではないのだ。利潤の追求ではなく、もっと別のものを求めて会社を経営している。これならばリブセンスの経営理念である「幸せから生まれる幸せ」も納得できる。

筆者が言うように、リブセンスの存在は、これから日本で起業しようという若者たちにとって、手を伸ばせば届くかもしれない「希望の星」になりうるかもしれない。

本書は要点が非常によくまとまっていて読みやすい。それでいてリブセンス、または村上太一氏の思考などを知ることができる面白い書籍だ。上記で上げた以外にも多くの学びや発見があるだろう。激しくお薦めしたい。本来であれば自伝を読みたいところだけど、それはまた別の機会になるだろう。

そして余談ではあるけれど、僕が知っている限りでは、「採用お祝い金」モデルはリブセンスの強みの僅かな一角にすぎない。この会社は更に多くの可能性を秘めていると僕は思う。

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