裸でも生きる1、2――25歳女性起業家の号泣戦記/感想


先日、アクセス解析ワークショップ「マザーハウス」で取り上げたマザーハウスの代表、山口絵理子氏の著書、裸でも生きる――25歳女性起業家の号泣戦記、裸でも生きる2 Keep Walking私は歩き続けるを立て続けに読みました。


どこかで聞いたことあるな、見たことあるな、と思っていたんですが、どうやら数年前に情熱大陸に出演されていたということで、ご存じの方も多いのではないでしょうか。

著者はワシントン国際機構などのインターンを経て、実際に寄付や支援などが途上国へ届いているのか?という疑問をもち、アジア最貧国であるバングラデシュへ旅立ちます。

その後、右翼曲折しながら起業し、バングラデシュ、ネパール、インドにまたがり、ビジネスを展開しています。

本書の1冊目ではこれまでの生い立ちから、何故バングラデシュでビジネスを展開したのかまでが書かれており、2冊目ではバングラデシュからネパール、インドへの展開や、さまざまなトラブル等が記されており、読むものを離しません。

本当に素晴らしい書籍だと思います。

裸でも生きる/レバレッジメモ

「かわいそうだから買ってあげる」では続かない
ビジネスはビジネス。利益がでなけりゃやっていけない。社会貢献も何もない、ということ。「利益第一」になるという意味ではなくて、NGOではなく、「かわいそうだから買ってあげる」商品でもなく、商品として勝負すると決めたのだから、価格、品質、デザインで勝たなければ、生き残れないとおう当たり前の現実だった。ビジネスの世界で戦うと決めたのに、「社会的な意義」をアピールすることは、そういった要素に頼ってしまっている証拠だ。「社会的な意義」を商談に持ち込んで、それでモノを売ろうとする自分の根性に、甚だ嫌悪を感じた。モノの意味や、心のコアにあるたくさんの熱い想いを、社会に伝える場や方法はたくさんあるわけで、卸先や取引先へ伝えるべきものは、まったく別物だ。

自分が彼らにできること
バングラデシュのみんなに比べて山ほどの選択肢が広がっている私の人生の中、自分が彼らにできることはなんだろう。

自分が信じた道を歩く
他人にどう言われようが、他人にどう見られ評価されようが、たとえ裸になってでも自分が信じた道を歩く。

フェアトレード商品はフェアではない?
いわゆるフェアトレード商品(立場の弱い途上国の自立を支援するため、公正な賃金や労働条件を保障して生産される商品)というものが発する、「かわいそうだから買って」というメッセージには、私はまったく共感ができなかった。かわいそうでもなんでもない。チャンスさえ与えられないままに、彼らのポジションを「かわいそう」と逆に規定してしまうようなマーケティングのどこがフェアなのか私には分からなかった。また、他者からの援助や寄付を主な財源にしたNGOの活動には、サステナビリティ(持続可能性)など担保にされないのではないか、とも思う。

ピンチは次なる可能性
ビジネスをしている以上、ピンチはある。けれどもそんな時こそ、自分たちをさらに強くするための「変化」が生まれるときである。ピンチは次なる可能性。攻めの経営に繋がっていくはずだ。

物の作り方、ビジネスのあり方を1カ国でも多くの人に見せてあげたい
その人たちが「やればできるんだ」とわかれば、私が死んでも誰かがきっと何かをやるだろう。その「種」を蒔けるかどうかが、大事なんだと私は思う。

裸でも生きる――25歳女性起業家の号泣戦記/まとめ

ここまでであれば、これまで読んだ多くの書籍となんら代わりありません。ところが本書には起業家として、人間として、そしてマーケティングの本質としても、多くの学ぶべき視点が描かれていました。

その中でも個人的にはフェアトレードのくだりに激しく共感したので抜粋します。

人間の普通の”欲求”と真正面から向かい合う
重要なのは、途上国のために購入するというアプローチではなく、「かわいいものがほしい」「かっこいいものがいい」という人間の普通の”欲求”と真正面から向かい合い、満足感を満たすプロダクトを作りながら、実は確実に途上国の雇用を増やし、社会の利益とつながっている仕事をすることだと思う。

当たり前のことですが、見落とされがちです。

私自身、福島県出身であり、現在の肩書き柄、仕事以外でも多くのNPO、NGOの方々とお話する機会やお会いする機会がありますが(特に今の時期は…)、ここまで具体的な”本質”にまで目を向けている方の話は滅多に聞くことができません。

実際には本当にその通りで、”欲求”と向き合わない限り、「かわいそう」という思考が先行して商品を購入されてしまい、結果的にそれは継続しにくいというのが現状ではないでしょうか?

特に今はまさに東北の地震や原発に注目が集まっており、正直、途上国のことまで気にすることはできないのが現状ですが、”欲求”と向き合った商品である限り、「かわいそう」ではなく、「欲しい」という姿勢で接してもらうことができるはずです。

こういったものを書籍をという間接的なメディアを通してはありますが接してしまうと、やはり現場から突き上げるような力は非常に大事なんだなと痛感させられます。彼女は自分の目で、体験で得たものを書籍を通して発しています。

このような思考にはさまざまな意見があるかと思いますが、私は多くの感銘を受けました。こんな時代だからこそ、一読する価値がある書籍ではないかと思います。

そして本書は下記のような考えさせられる一言で締めくくられています。

バングラデシュのみんなが私に問いかける
「君はなんでそんなに幸せな環境にいるのに、やりたいことをやらないんだ?」

そんなわけで色々と考えせられましたので、地震直後に行っていたGoogle Grantsの支援、少し延長したいと思います。

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