次世代コミュニケーションプランニング/感想


スケダチの高広さんが初めての単著を出され、各所で話題にあがっていたのですけども、先行発売がされた店頭ではなく、Amazonでの購入だった為に手に取るのに大分時間がかかってしまった…。

本書を読み終えた今、どういった方々にお薦めできる書籍なのかと言われれば、もうこれは”コミュニケーション”というものに携わる方すべてであるというほかないと思います。

ここでいう”コミュニケーション”とはWebデザイナーであれ、コピーライターであれ、アナリストであれ、リスティング広告プレイヤーであれ、どのようなビジネス上のポジションにいても必ずといっていいほどに接する部分であり、意識して”コミュニケーション”というものに積極的に関わっている方々にはより強くお薦めしたい書籍です。それらを常に意識していない人間と意識している人間とでは圧倒的に後者が強いと僕は思っています。

個人的にはChapter1「広告を超える」とChapter5「コンテクストを生み出す」に関しては得るものが大変多く、これまでボヤっとしていた「コンテクスト」の考え方や重要性をより明確に理解することができた。この箇所を読むだけでも価値が十二分にあるのではないかと思います。

その他にも仕事に対する姿勢だったり、考え方なんかも高広さんの経験から学ぶことができます。以下では個人的なメモとして、本当に重要な部分だけを書き出しました。

次世代コミュニケーションプランニング/レバレッジメモ

クライアントのいうことには”オーダー”と”オファー”の2つしかない。
“オーダー”っていうのは、広告主のほうでも社内でいろいろ決まっていることだったりするので、そのまま良い形に実現してくれればいいわけ。一方で”オファー”っていうのは、広告主の方でもまだ明確に決まっておらず、頭の中でモヤモヤしていることで、そのモヤモヤの整理も含めて一緒に解決してくれるかどうかなんだよね。

コミュニケーションプランニングとは?
今までの「広告」とは、商品やサービスを消費者に「伝える」ための技術・作法だった。「コミュニケーションプランニング」とは、商品やサービスと消費者が「会話する」ための技術・作法である。

メディア感覚とは?
「それが世の中をどのように変えるか」ではなく、「それが世の中にどのように埋め込まれているか、そしてそれはどのようなさまを見せるか?」という思考法を持っていれば、新しい情報技術やプラットフォームがカンブリア紀の生物波に次々と生まれるような状況であっても、ブームに煽られることのない「メディア感覚」を持てるはずだ。

コンテクストとは? wikiより
コンテクストとは、メッセージ(例えば1つの文)の意味、メッセージとメッセージの関係、言語が発せられた場所や時代の社会環境、言語伝達に関連するあらゆる知覚を意味し、コミュニケーションの場で使用される言葉や表現を定義付ける背景や状況そのものを指す。

例えば日本語で会話をする2者が「ママ」について話をしている時に、その2者の立場、関係性、前後の会話によって「ママ」の意味は異なる。2人が兄弟なのであれば自分達の母親についての話であろうし、クラブホステス同士の会話であれば店の女主人のことを指すであろう。このように相対的に定義が異なる言葉の場合は、コミュニケーションをとる2者の間でその関係性、背景や状況に対する認識が共有・同意されていなければ会話が成立しない。このような、コミュニケーションを成立させる共有情報をコンテクストという。

プランニングの際に考えること
「ある商品を世の中に”埋め込む”ためにはどうすればいいか?」という視点。

Through The LineかつNo Line(広告の領域と販促の領域を一気通貫で考える)
購買プロセスはAbove The Line(ATL)と呼ばれる「認知・理解」を促進する領域と、Below The Line(BTL)と呼ばれる「比較検討・購入」を促進する領域に分けられる。一般的には全社が広告の、後者が販促の領域とされる。一方、コミュニケーションプランニングでは、あらゆるアイテムを「メディア」として捉える視点と共に、このATL,BTLといった広告・販促の「境界線=Line」を一気通貫で考えるThrough The Lineの思考でなくてはいけない(そうすることで必然的には購買プロセスで考えることになる)。また、OnlineとOfflineの境界線を持たない「No Line」でなければいけない。

「Through The Line」かつ「No Line」でプランニングを行うのが「コミュニケーションプランニング」だと、言うだけなら容易い。まったくのニュートラルなスタンスで考えるからといって、なんでもやっていいわけではない。「コミュニケーションプランニング」を行うための「戦略地図」は必要であり、それを生み出す作業が「コンテクストプランニング」と考えるべき。

「コミュニケーションプランニング」への思考
どういった「インサイト」であれば「刺さる」かという考え方はしない。「この商品、どのようなコンテクストなら受け入れてもらえるか、どのようなコンテクストの中に埋め込まれるか」「どのようなコンテクストを開発すべきか」という思考に進化する。

次世代コミュニケーションプランニング/まとめ

Through The LineかつNo Lineの考え方はどんなビジネスでも取り入れるべき思考ですよね。僕のセミナーでも必ずAISASなんかの消費者行動モデルを使ってリスティング広告の仕組みや役割を紹介することがありますが、Above The LineとBelow The Lineの考え方は本当に大事です。何はどんな役割を持っているのか?こういった思考を続けることで、より本質的な箇所が分かってきます。

また、本書内ではコンテクストプランニングのフレームワークも大和ハウス、ツヴァイなどの事例と共に惜しげもなく公開されており、考え方の基礎から実行までを確認できるため、コンテクストプランニングをより深く理解することができます。

1度通して読みましたが既に本書はボロボロになりつつあります。これは気になった箇所を何度も何度も理解できるまで読み返したからですね。それほど考えさせられる書籍だったし(少なくても僕にとっては…)、これからも何度も読み返すと思う。

この書籍は僕の書評だけではちょっと伝えきれないですね。本来はもっともっと書き出したい内容は山のようにある書籍なんですけど、詳細は本書にて実際にご確認いただくのが最良の選択肢だと思います。

僕にとっては「考えること」をより楽しくさせてくれる書籍でした。

次世代コミュニケーションプランニング
高広 伯彦
ソフトバンククリエイティブ
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