イラン人は面白すぎる!/感想


イランといえば、ドーハの悲劇、こんな連想をしてしまうサッカー好きは少なくないだろうと思うけど、実はあれ、イラクですから!みたいな、そんなぼやっとしたイメージで僕たち日本人はイランという国を中東の国々と一緒くたにしてしまってはいないだろうか?

かくいう僕もその中の一人だった。本書を読むまでは…。

ところが、イランは中東の中でもかなり独特の文化を持っているらしく、嫌われた国らしい…。アルカイダなんかと一緒に扱われることも多いが、実はイランはウサマ・ビン・ラディンから「イランを地図上から抹殺する」と言われるほどに相容れない存在なのだ。

それには宗教的な背景がある。イスラム教は大きく分けてシーア派とスンニ派に分けられ、分かりやすい例えを使えばカトリックとプロテスタントみたいに、本流と分派があるのと大差ない。これがまぁ、ガチガチにいがみ合ってる、というのがイスラムなんだそうだ。とはいえ、若者同士が宗教について語り合うと「どっちでもいいじゃん」となるらしい…。しかもイラン人は国全体がイスラムな雰囲気だから「なんとなくイスラム教徒」をやっているとまでいう。

うーん、なんたるアバウト。。。まぁ、そんなイランは嫌いじゃないぞ。

本書は在日イラン人であり吉本の芸人、デスペラードのエマミ・シュン・サラミ氏が書いた、イランという国の実話だ。これが面白い。面白いなんてものじゃない。電車で読むには危険過ぎるほどに…。

一つのエピソードを紹介すると、イランではおしんの視聴率が90%、キャプテン翼の視聴率が60%と国民的人気番組になっているそうだ。そんなイランではアンパンマンも大人気だが、ラマダン時(断食)には食べ物の番組が一切シャットアウトされるらしく、アンパンマンの顔にモザイクをかけて放送されるらしい。こうなると、バイキンマンとアンパンマンではどちらが悪者なのかわからない。

その他にも地位によって圧倒的な差別を小学生くらいから受け、勝負はいつもできレースの話(王族は生まれてから死ぬまでゆとりらしい)だったり、ラマダン(断食)を掻い潜る策だったり、父親に豚肉食べさせてしまうエピソードなどは面白すぎて危険だ。。。(イスラムでは豚は食べてはいけない)

また、そんなおちゃらけた箇所だけではなく、随所随所に政治・経済・戦争・人権などへの考察も大変興味深く、イランという国に限らず、中東を詳しく知るきっかけを与えてくれる書籍としても大変興味深い。

僕たちはどのくらい本当のイランについて知っているのだろうか。偏ったメディアの報道などによって様々な「イラン」が作られ、その作られた「イラン」が蔓延する。その結果、核保有によって危険因子としてタグ付された「イラン」はそのイメージを拭いきれないのではないだろうか。これは賛否があるだろうけど、僕は本書で情報の怖さをまざまざと感じた。それぞれの立場や視点からの主張を加味しない限り、真実は誰にもわからないのだから。

爆笑エピソード満載で、本当のイランという国、イスラムという宗教、世界の1部を知ることができる、オススメな一冊です。懸念点があるとすれば、著者は無事イランに帰ることができるのだろうか…ということだけですね。

イラン人は面白すぎる! (光文社新書)
エマミ・シュン・サラミ
光文社 (2012-04-17)
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