リスティング広告でブランディングできるという概念はそろそろ少し否定しておいた方がいいかもしれない

映画の告知や日用品の紹介、テレビの新ドラマなど、リスティング広告がさまざまなシチュエーションで利用されるようになったと思う。

実際にそういったオファーは今後も増え続けるだろうし、それ自体を否定するつもりは毛頭ない。むしろそれだけリスティング広告が認知され、重要性が増し、社会的地位を獲得したということでもあると思うし、僕自身はむしろ歓迎という以外の感情を持ち合わせていない。

一方でリスティング広告をブランディングに使おうという話も以前にも増して増加している。Google AdWordsのディスプレイネットワークで配信することが出来るイメージ広告はその典型的な配信手法だし、TrueViewなんかは確かに有かもしれない。そんなときの担当者の口説き文句は以下のようなものである場合が大半だ。

  1. 1日100万インプレッション、またはそれ以上で露出ができる
  2. クリック単価だから見てもらうだけであれば費用は掛からない
  3. イメージ広告で認知度が向上する etc…

その他にもまだまだあるわけだが割愛する。たしかにどれも魅力的なオファーかもしれない。そして決して間違いでもないだろうとも思う。しかし、あえて警鐘を鳴らすとすれば、それによる影響度をちゃんと計測できるのかという部分。

かつてトヨタ、電通とGoogleが検索連動型広告のブランドへの影響調査を行った。その内容は自然検索結果の最上部に「エコカー A」の公式サイトが表示されている場合と、もう1つは自然検索結果の最上部に“エコカー A”の公式サイト、および検索連動型広告のプレミアムポジションに“エコカー A”が表示されている場合で、その影響度を測るものだった。

発表によればそれによって自然検索のみで表示された場合よりも、自然検索と検索連動型広告に同時に表示があった場合の方が、”エコカー A”の好感 (+ 16%)・概要理解 (+ 14%)・購入意向 (+ 3%) が高まるということが分かったという。


詳細:検索連動型広告のブランドへの影響調査

ここで「なるほど!検索連動型広告はブランディングに使えるじゃないか!」と感じることが出来るのであれば、あなたはそれ相応のナショナルクライアントを抱え、それなりの決定権を委ねられている担当者か、その先の見えない担当者であるかの2拓になってしまう可能性がある。(失敬)

この調査にはどれだけのコストや時間がかかっていたのかを想像してみてほしい。好感?概要理解?購入意向?どうやって計測したのか、それを自社で出来るのか、予算数十万円、数百万円でできるのか、などなど、問題は山積みになるのは容易に想像できるだろうと思う。

勿論、計測がすべてではないだろう。月商数百万円規模のECサイトがアクセス解析を使わなくても良い理由でも書いたように、仮に現場レベルで大きな成果を実感できるのであれば計測なんてものは無視したほうがいい場合も多いのだから。

※余談だが”計測”ですべてが解決できるというのは大きな間違いだ。大事なのは”計測”によって現状把握し、そこから導き出される次なる”アクション”であるべきだ。

リスティング広告でブランディングが出来ないということでは決してない。ただし、その為には環境を整える必要があるだろうし、それ相応のリテラシーを持った担当者が臨まなければならない。そしてそれによる多大なコストも見込むべきだろう。

これらを踏まえると、だれでもかれでもがリスティング広告でブランディングできるという概念はそろそろ少し否定しておいた方がいいかもしれない。特に、対象のクライアントが一般的に知られている企業でないのであれば尚更だ。

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