リスティング広告が完全自動化される時は来るのか?

夏休み真っ盛りということでこのエントリーを見る方もそこまで多くないでしょうから、今年も昨年同様につらつらと書くのです。

「リスティング広告が完全自動化される時は来るのか?」

ここ数年でこのような問いかけや相談がかなりの割合で増えてきたように思います。これは僕たちリスティング広告を生業にするプレイヤーにとって切っても切り離せない問題であり、決して目を背けることは出来ない非常に大きな問題であることは明白です。大きな問題から目を背けることは簡単ですし、その方が楽ですが、目を背けること自体、プレイヤーとしての死を意味することと同義となります。それは市場からの撤退を意味しますので、しっかりと問題に向き合うことが重要だと言えるでしょう。

本題に戻ります。では本当にリスティング広告が完全に自動化されることはあるのでしょうか?ここ数年、自分なりにこの大きな課題を抱え、思考を繰り返して来ました。その結果、現段階で僕が断言出来るのは、YESであり、NOでもあるということです。

つまり、リスティング広告は完全に自動化になっていく局面と、そうでない部分、つまり自動化では賄えない部分が混在していくということです。そして、この議論には異なる2つの軸が存在しています。

人間が時間を割くべき箇所とそうでない箇所(自動化すべき箇所)を明確に分ける

1つ目の軸は1つのアカウント内での議論です。例えば、特殊なケースを除き、一つの商材でおおよそ月額2000万円以上を超える予算でアカウントを運用している場合などはキーワードや配信先の入札調整などといったオペレーションの部分はできるだけ自動化することを僕は推奨します。実際にGoogle アドワーズには自動化ルールやキャンペーンオプティマイザーなどの非常に優秀な自動化機能が数年前から存在しています。これらの機能は数年前とは段違いに精度が増しています。それらを有効に活用することによって元々そういった単純作業に費やしていた人間のリソースを未来の取り組みに投資すべきです。優秀な人間のリソースを過去のデータからの微調整に割く必要は無いのですから。

※勿論、全ての大きなアカウントがそうだと言っているわけではなく月額2000万円を越えたあたりからその傾向が強くなるという意味です。

ここでの「未来の取り組み」こそが、自動化では賄えない部分ですね。それは新しいカテゴリーからのキーワード選定であったり、新しい配信先の選定や、訴求軸の変更だったり、時にビジネス自体の変換だったりとさまざまです。

参考:ツライだけじゃない。お客さんを次のステージに連れて行く、それが検索連動型広告だ!【Search Summit Tokyo 2013レポート・後編】

※類似ユーザーやディスプレイキャンペーンオプティマイザーなども未来への投資の機能といえるでしょう。
参考:リスティング広告運用を飛躍的に効率化させた5つのGoogleアドワーズテクノロジー

リスティング広告の運用には時間をかけようと思えば何時間でもかけることが出来ますし、世の中的には時間をかければかけるだけ成果が上がりやすいと思っている方も多いのが現状ですが、私の経験上、運用時間は一定の規模を超えてしまうと成果との相関性は非常に希薄なものになっていきます。アクセス解析でもそうですが分析に10割の力を割くことよりも、意思決定の出来るデータが取得できた時点で次の行動・思考に移ることでよりビジネスインパクトのあることに取り組むことが出来るようになるでしょう。

参照:行動する為のデータ分析は8割程度で十分

これらのことから、「未来の取り組み」にこそ、これからのリスティング広告プレイヤーは時間を割くべきでだと考えてますし、そういった方向に限られたリソースを割くことで、リスティング広告の本当の意味での価値を提供することができ、更にはリスティング広告プレイヤー自体の疲弊を減らすことが出来ます。それが結果的に離職を防ぐことが出来るのではないか?と思うのです。

どこかでも書きましたが、日々進化するテクノロジーの流れは不可逆です。であるとするならば、テクノロジーを避けるのではなく、テクノロジーに寄り添うことがこれからのリスティング広告プレイヤーに最も求められる姿勢ではないでしょうか。

「自動化を利用するとどう動くのかが怖い」「新機能が怖い」現場ではそんな意見も未だに飛び交いますが、そんな方々には昨年同様、以下のフレーズを。

Charles Robert Darwin

もっとも強い者が生き残るのではなく、もっとも賢い者が生き残るのでもない。唯一生き残るのは、変化できる者である。

さまざまなところで上げられますが、「進化論」を説いたチャールズ・ロバート・ダーウィンも「唯一生き残るのは、変化できる者」と言ってます。変化・順応が出来ないものは生き残れない。これは今も昔も変わりません。深くはいいませんが、自動化について懸念点を示す様な場をみると産業革命の頃のようですよね。直接は見てないけど。その後の行く末はご存知の通りです。

リスティング広告市場全体の話

2つ目の軸はリスティング広告市場全体を指します。自動化の力を最大限に発揮するにはある程度のデータボリュームが必要になってきます。データボリュームが無ければ現在のテクノロジーが有効に働くことはないでしょう。その為、ある程度リスティング広告に予算を割いているクライアントでなければ、自動化の恩恵を受けることは難しい。

となると、おおよそ月額50万円以下のリスティング広告費で運用しているクライアントなどのアカウントを全て自動化で最高のパフォーマンス出すことはやはり難しいわけです。場合によっては数百万円規模のアカウントでも難しい場合が多いです。こうなった時にはやはりリスティング広告プレイヤー個々の運用スキルが頼りになるわけですね。

とはいえ、Google アドワーズにはGoogle AdWords ExpressといったURLの入力を行うだけで全て自動でGoogle アドワーズのセッティングが可能になるテクノロジーがものすごい勢いで進化していたり、かなり手前味噌ですが申し込むだけでリスティング広告の設定を全てお任せ出来る店舗型ビジネス向けの集客支援サービスであるcaller(コーラー)などもありますから、ある程度簡易的にリスティング広告をスタートできる環境も整ってきていますので、こういったテクノロジーがもっともっと進化すると思っておいたほうがいいでしょうね。

まとめ

これらのことからリスティング広告が完全自動化される時はすぐには訪れないけれど、オペレーションの重要性は徐々に引き下がっていくことは間違いありません。そんな時に、どういった視点(長期的視点と短期的視点、チームには両方不可欠です)を持って、どういう仲間と一緒にいるのかは非常に重要でないかなと思います。

アナグラムの求人

世間が思うよりもリスティング広告には本来まだまだ大きな可能性が秘められていて、もっと大きな価値を生むことだって出来るはず。それらをパートナー企業や同じ想いを持った仲間たちと第一線から突き詰めていきたい。そんな想いで今の仕事に取り組んでいます。だからといって、リスティング広告に依存した発想は危険です。非常に逆説的ではありますが、リスティング広告に依存した発想の人間は本当の意味でのリスティング広告の価値を出すことは難しいからですね。

こういったことも含め、一人でできる事には限界がありますし、一人では世の中は変えられない。何を重要視するかは個人の自由ですが、個人事業主を経てチームとして活動している自分にとって、個人よりチームに大きな価値と可能性を感じています。これからの激動のリスティング広告業界では良くある話かもしれませんが、何をするか?よりも、誰とするか?といった働き方が重要だと思うのです。

既にリスティング広告に携わっていて、第一線からこの可能性を突き詰めてみたいと考えている方がいれば、うちのコアメンバーと一度食事でもしながら話してみませんか?

参考:アナグラムの採用情報

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