アトリビューション 広告効果の考え方を根底から覆す新手法/感想


ATARA合同会社の佐藤さん、杉原さん、有薗さん、Fringe81の田中さんらの共著による、日本で初めての本格的なアトリビューションに関する専門書になるのではないないでしょうか。

個人的にもアトリビューションとは縁深く、昨年アクセス解析イニシアチブで開催されたアトリビューション分科会に参加してさまざまな学びもあり、今後リスティング広告プレイヤーはより具体的にアトリビューションについて理解しておかなければならない考え方の一つであることに疑う余地はありません。

参考:アトリビューション分科会すべてに参加して思う”今”と”これから”

本書の序文にて素晴らしい内容をスケダチの高広さんが掲載しています。

広告の面白さは、いかにして「人の気持ち」と勝負するかであって、すでに人の興味関心が動いた後にでるような検索連動型広告的な広告世界感だけであらゆるネット広告が語られるようになり、それを「効果がある広告です」というのは本当につまらない。どのように人の気持ち、興味関心が動いたかを推測し、プランをしない広告なんてほんとつまらないのだ。

いかにして「人の気持ち」と勝負するか、いかにして「人の心」を動かせるか、この考え方は広告に携わる人であれば必ず念頭に置いておかなければいけない考え方ではないでしょうか。

本書内でも紹介されていますが、アトリビューションとは「どうすれば今まで振り向かなかったユーザーが振り向いてくれるかをあらゆるデータを駆使して分析し、仮説に基づき広告接触をコントロールして成果を最大化する取り組み」です。その為、アトリビューションには「正しい」モデルはありません。「適切」なモデルがあるだけです。取り扱う商材やサービスによって重み付も異なりますし、考え方そのものを変えて臨まなければいけません。

Google アナリティクスのマルチチャネルや各種広告効果測定ツールをみていれば、どの箇所がトリガーになりやすいのか、どの箇所が頻度高く出現しているのかを容易にみることができます。これらをマネジメントすることで、より効果を上げることができるかもしれない。そんな取り組みが技術の進歩によって加速度を増してきているのを無視することはもはや僕たちにはできません。

本書はアトリビューションに関する”きっかけ”を与えてくれる書籍だと思います。アトリビューションの考え方からマネジメント、そしてリスクまで。また、分析パターンの提案から事例まで、これまでのATARA合同会社とFringe81の取り組みが出し惜しみなく紹介されている点でもマーケターは得るものが大きいはずです。これまでアトリビューションについて傍観していた方々も、読んでおくべき書籍だと思います。

ただし、繰り返しになりますが、すべての広告主がアトリビューションに取り組む必要はないと僕は考えています。これは月商数百万円規模のECサイトがアクセス解析を使わなくても良い理由でも書いた内容と同じで、アトリビューションがビジネスに大きなインパクトを与えるような状況にある広告主に限ります。また、解析ROI(ここではアトリビューションROIかな)を超える改善が見込めなければ意味がありません。

個人的にはアトリビューションを行わなくても8割方の施策は考え方やメディア選定でうまくいく傾向があると考えます。残りの2割を補完してくれること、更には新しいトリガーを見つけること、顧客を理解することこそが、アトリビューションの役割なのではないでしょうか。広告主によってはこの2割が喉から手が出るほどにほしい場合も多くあります。その時こそ、アトリビューションの出番です。

それまでにはさまざまな広告を最適化していかなければなりませんし、リスティング広告の地固めも非常に重要になってくるのも忘れてはいけません。僕たちの今期の目標はリスティング広告の地固め的な象徴になることです。その為に、更に深くアトリビューションを追っていきます。

アトリビューション 広告効果の考え方を根底から覆す新手法
田中 弦 佐藤 康夫 杉原 剛 有園 雄一
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